最近のRed Hat OpenStack Platformに関する情報

Red Hatでクラウドインフラ全般を担当しているソリューションアーキテクトの伊藤拓矢です。
※この記事は記事公開時点での一般公開可能な情報を提供しております。
 
■この記事の情報
現在利用可能なRHOSP各バージョンの状態
最新であるRHOSP16.1の機能
OpenShiftとの連携
 
■現在利用可能なRHOSP各バージョンの状態
[1]で示されているURLの内容を開くと”ライフサイクルの日付”という項目があり、こちらを参照しますと執筆時20年9月23日現在はRHOSP16、RHOSP13、RHOSP10の3つのバージョンがサポート可能な期間に入っています。
RHOSP15に関しては1年間のサポート期間となっていましたので9月19日にサポートが終了致します。
またRHOSP10に関してはすでに拡張ライフサイクルサポート期間に入っています。
そのため現在からRHOSPを利用するとすると、RHEL7系をホストOSとしているRHOSP13か、RHEL8系をホストOSとしているRHOSP16のどらかをご利用頂くこととなります。
今回のRHOSPからサポート期間が短いショートタームバージョンのリリースが行われないようになりました。
これは10年間開発され続けてきたOpenStackが安定しプラットフォームとして安定的に利用頂くことが可能になっていること、
Upstreamでは半年間のサポート期間しか設けられなかったものにたいして、従来の1年間のサポートとしてもあまり利用が進まないことが挙げられます。
今後は長期サポートが提供されるRed Hat OpenStackのみがリリースされていきます。OpenStack Foundationが開発を続けるOpenStackは従来通りのリリースサイクルとなっています。
最新の機能の提供と安定化したRed Hat OpenStackを実現するべく、長期サポート期間においてコードベースを変更せず最新でリリースされる機能を選択しバックポートを行ったコードが提供されます。
現在最新のRHOSP16.1ではコードベースをTrainとしてUssuriで強化された機能をバックポートして提供しています。
 
 
 
さて[1]のURLをご確認いただくとRHOSP16に関しては、RHOSP 16.0、RHOSP 16.1、RHOSP 16.2といったRHOSP X.YとしてYの値が0~2まで設定されていることが分かります。
これはRHOSP16リリースからRHOSP16のマイナーバージョンとホストOSであるRHEL8のマイナーバージョンを固定し、それぞれのサポート期間において安定してご利用頂くことを目的としています。
そのためRHOSP16のトータルサポート期間において、いくつかリリースされるRHEL8のマイナーリリースのいずれかが選択され固定化されます。
RHOSP16.0はRHEL8.1をホストOSとして利用しており、RHEL8.1のサポート期間に準じてRHOSP16.0のサポート期間が設定され、2020年10月27日にサポート期間が終了致します。
RHOSP16.1ではRHEL8.2をホストOSとして利用しているため、2024年4月30日までがサポート期間となります。
図示されていませんが文中にあるRHOSP16.2ではRHEL8.4がホストOSとして利用される予定のためRHEL8.4のライフサイクルに準じたサポート期間となる予定です。
 
 
 
RHEL8のライフサイクル計画は[2]のURLから知ることができます。
 
 
■現在最新のRHOSP16.1の機能
さてRHOSP16.1ではどういった機能が追加/強化されているのでしょうか。
一般的なIaaSとしての機能強化、テレコムのNFVi環境向けもしくはエッジコンピューティングのための機能の強化の3通りに大きく分けて分類されています。
 
一般的なIaaSとしての機能強化について、いくつか新機能を紹介をしたいと思います。
 
・LBaaSを提供しているOctaviaにおいて、Amphoraインスタンスの冗長化をサポート
RHOSP16.1では、Octaviaを利用するに当たって使用するインスタンスのactive/standbyトポロジーを実装しました。
また、従来AmphoraインスタンスではUDPトラフィックをロードバランス対象とすることができませんでしたが、これが可能になりました。
 
・NFSサービスを提供しているManilaにおいて、ネイティブCephFSドライバをサポート
RHOSP16.1では、ネイティブCephFSドライバをサポートしています。
 
・NVDIMMを利用したインスタンスの生成
永続化できるメモリであるNVDIMMがホストハードウェアに搭載されている場合、これを利用したインスタンスを生成、管理することができます。
この機能はTP(Technology Preview)としてリリースされており、テスト利用することを想定しておりサポートは提供されません。
 
・AMDが提供するSEV機能を利用したインスタンスの生成
SEV機能を用いてメモリ暗号化を使用するインスタンスを生成することができるようになりました。
従来メモリは揮発性があると言われており電源を切ればデータは飛ぶのでセキュリティの高さとしてはディスクに書き込む場合に比べて
比較的高いとされてきました。しかしながらNVDIMMを用いた場合は電源を切ってもデータが飛ぶことがないため物理アクセスを想定したメモリセキュリティに配慮が行われています。
この機能はTP(Technology Preview)としてリリースされており、テスト利用することを想定しておりサポートは提供されません。
 
・大規模クラスタを構築するためのミニオンの提供
RHOSP16.1ではテスト環境において700HVホストを一つのクラスタに組み込むことに成功しています。
物理ホストのオペレーションを可能な限り減らしてゼロタッチプロビジョニングを実現するべく、
RHOSPではDirectorと呼ばれるホストがハードウェア情報を収集したりしてデプロイを行っていました。
このDirectorはクラウドに対して1台のホストが担っており大規模HV環境においてはボトルネックとなるケースがありました。
今回からTPとして提供されるようになったミニオンはDirectorの一部機能を担いスケーラビリティの確保に貢献することができます。
この機能はTP(Technology Preview)としてリリースされており、テスト利用することを想定しておりサポートは提供されません。
 
■OpenShiftとの連携
リファレンスアーキテクチャの公開
[3] のURLではOpenShift4.4とRHOSP13もしくはRHOSP16を用いたリファレンスアーキテクチャを公開しています。
AWSやGCPといったパブリッククラウドでOpenShiftをデプロイするときは、いくつかの質問に答えてデプロイをすると30分程度でクラスタが立ち上がり、非常に簡単にOpenShiftを利用することができます。
これがオンプレ環境であってもOpenShiftのデプロイで同様な体験をすることができ、パブリッククラウドであってもオンプレのプライベートクラウドであっても即座にOpenShiftを利用することが可能になります。
 
 
・最後に
黎明期からOpenStack Summitや大規模本番環境に適用するといったことでOpenStack周辺で活動してきた筆者として個人的な感想を述べるとOpenStackは誕生から10年を迎え、安定したとても理解しやすいインフラ基盤のソフトウェアとなったと思います。
KubernetesやOpenShiftといったコンテナ基盤を開発者が使いこなすためには、柔軟性があり基盤と対話できるAPIを備えたインフラが非常に重要となります。
オンプレ環境においてOpenStackは柔軟性とKubernetesが必要とするAPIを備えているため相性が良く使いやすいです。
 
 
 

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。