Red Hat OpenStack Platform 近況

OpenStackを担当しているソリューションアーキテクトの輿水です。

Red Hat OpenStack Platform 16 からリリースサイクルが年単位に変更されたこともあり、表立っては大きな動きはありません。あくまで「表立ってはありません」というだけで、日々機能拡張や改善が行われています。新リリースが発表される訳ではないので地味過ぎて「OpenStackってどうなってるんだっけ?」という状態だと思いますので、今更かもしれませんが、Red Hat OpenStack Platformのリリースについて緩くお話したいと思います。

メジャーバージョンリリース

Upstreamのリリースを元にRed Hatがエンタープライズ向けに機能拡張などを行ってリリースするもので、RHOSP 13(Queensベース)やRHOSP 16(Trainベース)と表記されます。

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マイナーバージョンリリース

RHOSP 15以前では、バグフィックスやCVEs、拡張機能が提供されおり、後々のアップグレードのためにRHOSPを最新状態にしておいてくださいとお願いはしておりましたが、マイナーバージョンについてあまり意識することはなかったと思います。RHOSP 16から、RHOSP 16.0 / 16.1 といったマイナーバージョンが表記されるようになりました。RHOSP 16は Red Hat Enterprise Linux 8 のマイナーバージョンに密接に結びついており、利用するRHEL 8マイナーバージョンに対応してRHOSPのマイナーバージョンが変わります。このため、例えば16.0から16.1にアップデートする際は、OpenStackが稼働しているホストのOS再起動が必要になります。

16以前のロングライフリリース版RHOSP 13においては、現在メンテナンスサポート期間のため、数ヶ月に一度、メンテナンスリリースがあります。RHOSP 13の最新版は10/28にリリースされており、バグ修正と機能拡張についてはリリースノートをご確認ください。 https://access.redhat.com/documentation/ja-jp/red_hat_openstack_platform/13/html/release_notes/chap-release_notes#red_hat_openstack_platform_13_maintenance_release_october_28_2020

ポイントリリース

16.1.zで表記されるリリースです。バグフィックスやCVEs、拡張機能が提供されます。ポイントリリースは概ね2ヶ月ごとにリリースされます。Red Hatが出している公式ドキュメントのリリースノート 16.1 | Red Hat Customer Portal を確認すると、今現在、16.1.2がリリースされていることがわかります。


RHOSP環境構築後、マイナーバージョンやポイントリリースについて、あまり意識することはないと思いますが、RHOSP 13からRHOSP 16.1へのin-placeアップグレードでは、RHOSP 13を最新版にアップデートすることを求められます。RHOSP 16については、16.0は既にフルサポート期限が終了しているため、現時点で導入するのであればバージョンは16.1になりますが、ストレージやネットワーク、Telemetryに関する機能はz単位で拡張されている場合もあるので、必要な機能がTP(テクノロジープレビュー)なのかGAなのかご確認いただければと思います。お探しの情報が見つからない場合などは、お問い合わせください。回答できる範囲で、回答させていただきます。

Red Hat OpenStack Platform 16.1 → 16.1.zへのマイナーアップデートの手順は「Red Hat OpenStack Platform の最新状態の維持」というドキュメントで公開されています。

Red Hat OpenStack Platform の最新状態の維持の流れ

  • マイナーアップデートの準備

16.1はRHEL 8.2でサポートされているため、アンダークラウドとオーバークラウドのレポジトリをRHEL 8.2にロックする作業が必要です。ドキュメントではPlaybookを利用してアンダークラウド、オーバークラウド( controller、compute )の設定しています。昔ながらの1台ずつ手動で実行する方法もありますが、繰り返し同様の操作をする部分は積極的にPlaybook化しています。次にExtended Update Support (EUS) リポジトリーへの変更を行います。EUSレポジトリーにはRHEL 8.2 の最新のセキュリティーパッチおよびバグ修正が含まれています。更にRHOSPと AnsibleのリポジトリーをRHOSP 16.1用、ansible2.9用に変更します。16.0からアップデートしている際は、既存の設定はRHOSP 16用、ansible2.8用が設定されているので、これらを無効にします。container-toolsモジュールとvirtモジュールのバージョンを指定のものに変更し、コンテナーイメージ準備ファイルの中でtagを16.1に設定します。

  • アンダークラウドの更新

director(アンダークラウド)自体のアップグレードを行います。directorの再起動を伴いますがオーバークラウドの稼働には影響しません。アンダークラウドの更新後、オーバークラウド用のイメージをアンダークラウドに登録します。

  • オーバークラウドの更新

アンダークラウドからオーバークラウド( controller、compute )の更新を行います。この時点では、ノードの再起動などは行われません。この手順の中で、OpenStack Block StorageとOpenStack Computeに対して、データベースのオンラインアップグレードを行います。

  • オーバークラウドのリブート

オーバークラウドのcontrollerを1台ずつPacemakerクラスター停止した後に、再起動します。controller1台が再起動している間、他の2台がサービスを継続するので停止は発生しません。これを他の2台に対して繰り返します。controllerの再起動後、computeを再起動します。再起動対象のcompute上に停止させたくないインスタンスがある場合は、他のcomputeにインスタンスを移行した後に再起動してください。

マイナーアップデートを行う場合も、事前に検証を行ってください。


RHOSP 15 から16.1へのアップグレード

また、先日「RHOSP 13 から16.1へのアップグレード」について触れましたが、15から16.1へのアップグレードの手順も公開されましたので、現在RHOSP 15をご利用の方は参考にしていただければと思います。

access.redhat.com


最近、パッケージの場所を聞かれたので記載しておきます。アクセスするためにはRed Hat Customer Portalのアカウントと、該当するサブスクリプションが必要です。

▼RHOSP 16.1のソフトウェア

https://access.redhat.com/downloads/content/191/ver=16.1/rhel---8/16.1/x86_64/product-software

▼OpenStack Platform 用 Open vSwitch (OVS) パッケージ

https://access.redhat.com/downloads/content/329/ver=/rhel---8/8/x86_64/packages

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。