Simple Content Accessでサブスクリプション管理を簡単にしたい

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Red Hatの森若です。今日は4月に拡張された、Simple Content Accessについてご紹介します。

Simple Content Accessとは

Red Hat Enterprise Linuxではシステムを利用する際に、subscription-managerコマンドで、システムの登録と、所有しているサブスクリプションとの対応づけを行う必要がありました。

今までの仕組みでは、サブスクリプションで提供される「pool」とシステムを対応づける(attach)必要があり、複数種類の製品を持っている場合には必要なpoolがわかりにくいため手間がかかるなどの難点があります。

Simple Content Accessはこのattachを廃止して「アカウントが対応する製品を1つ以上保有しているか」だけを考慮するように動作を変更するものです。利用の簡単さと引き換えに、サブスクリプションの必要本数を管理・強制する機能が失われるオプションです。利用する側からみると「システムの登録だけでyumが使えるようになるが、利用本数や台数は別途管理する必要がある」ものです。

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従来のしくみ(enforcing mode)とSimple Content Accessの比較

Subscription Watch

利用本数や台数を別途管理する必要があると書きましたが、これを補完するための仕組みがSubscription Watchです。アカウントについて、Red Hat Subscription ManagementやRed Hat Satellite、Red Hat Insightsへ登録されたシステム情報を基に、システム数を報告します。

Subscription WatchはRed Hatが推奨するサブスクリプション本数の管理方法ですが、少なくとも現状ではHigh AvailabilityやELSなどのアドオン製品は管理できません。さらにRed Hat直接の製品とOEM製品の区別もできません。これらの管理が必要でかつSimple Content Accessを利用する場合は、別途何らかの方法で管理をおこなう必要があり、登録時の手間と管理の手間にトレードオフの関係が発生します。

逆にRed Hat Developer Program for Individualを利用しているケースのような、OEM製品やアドオンを利用していない場合であれば、Simple Content AccessとSubscription Watchの組み合わせで登録時の手間が減り管理も今までと同等で済むので便利です。

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使ってみる

  • https://access.redhat.com/management を表示すると、Simple Content Accessを有効にするためのスイッチがあります。これを有効にするとアカウント全体で有効になります。 f:id:mrwk:20210611190052p:plain

  • Simple content access for Red Hat Subscription Management を有効にする

  • RHEL側での操作は非常に簡単です。 subscription-manager register としてシステムを登録するだけで yum install zsh のようにyumが利用できるようになります。

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  • 必要なリポジトリが有効になっていない場合は、subscription-manager repos --availableでリポジトリ名一覧を確認し、subscription-manager repos --enable=ansible-2.9-for-rhel-8-x86_64-rpms のようにして有効化します。

  • サブスクリプションの利用状況を確認するためにSubscription Watch https://cloud.redhat.com/insights/subscriptions/rhel を表示します。過去30日分の利用状況と現在有効なシステムの一覧が表示されます。

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subscription watch

各システムでSLA(Premium, Standard)や用途(Production, Development/Test, Disaster Recovery)を指定しておくと分類毎の表示がおこなわれます。

access.redhat.com

FAQ

Q: Simple Content Accessの利用は必須ですか?

A: いいえ。有効無効は任意に選択できます。

Q: Simple Content Accessではvirt-whoは不要になりますか?

A: いいえ。Red Hat Enterprise Linux for Virtual Datacenterなどのゲスト数無制限のサブスクリプションを利用する場合、virt-whoが必要であることは変わりません。

Q: どうやってサブスクリプション本数を管理しますか? Subscription Watchの利用は必須ですか?

A: Red HatではSubscription Watch を利用することを推奨していますが、必須ではありません。台帳や運用管理ツールの機能などで管理しても問題ありません。

Q: 「拡張された」とありますが今まではどうだったのですか?

A: 今まではRed Hat Satelliteを利用しているお客様が、Satelliteで利用するマニフェストの単位でSimple Content Accessの利用有無を設定するものでした。現在は拡張され、アカウント全体でRHSM(Satelliteを利用しないサブスクリプション管理, Red Hat Subscription Management)について有効・無効を設定できるようになりました。

また利用開始にあたってRed Hat社内で事前申請が必要だったのですが、Red Hatアカウント内で組織管理者(Organization Admin)の権限があるユーザならいつでもセルフサービスで利用開始できるようになりました。

Q: 本数をチェックしないということは使い放題なのですか?

A: いいえ、Simple Content Accessを利用しても契約は全く変わりませんので、利用しているシステムの構成や数に従って適切な数のサブスクリプションを購入する必要があります。

Q: 利用手順は変わりますか?

A: はい。Simple Content Accessを有効にするとsubscription-manager attach の操作が不要になり、行うと失敗するようになるため、関連する手順が変わります。

Q: Subscription Watchを利用するときに、システムをRed Hat InsightsとRed Hat Subscription Managementの両方に登録するとサブスクリプションを2倍消費しますか?

A: いいえ。システムの重複は適切に排除されます。

Q: アタッチが不要なのはわかりましたがアタッチしようとするとどうなりますか

A: 以下のようなエラーメッセージが出力されます。

英語:
# subscription-manager attach --auto
Ignoring request to auto-attach. It is disabled for org "6062722" because of the content access mode setting.

日本語:
# subscription-manager attach --auto
自動割り当ての要求を無視します。これは、コンテンツアクセスモードの設定により、組織 "6062722" に対して無効となっています。

参考リンク

access.redhat.com

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* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。