Red Hat OpenStack Platform 16の新機能/改善ポイントの紹介

クラウドインフラ全般を担当しているソリューションアーキテクトの伊藤です。
今回はRed Hat OpenStack Platform 16の新機能と改善ポイントについて紹介いたします。
OpenStackはクラウドインフラを提供するソフトウェアとして開発されており、APIで仮想マシンやネットワーク、ストレージなどのリソースをコントロールすることができ、
AnsibleやOpenShiftとの連携強化が毎バージョン行われています。
RHOSP16のリリースノート全文は以下のURLをご参照下さい。
access.redhat.com

■はじめに

2020年2月20日にRHEL8初の長期サポート版のRHOSPがリリースされました。
RHOSP16は去年10月にリリースされたUpstream版のOpenStack Trainをベースにしており、今後リリースされる予定となっているOpenStack Ussuriで搭載される重要な機能が、今回リリースされたRHOSP16にも反映する予定となっています。
RHOSP16ではOpenShiftとのインテグレーションが強化されており、プロキシ環境での利用やKuryrによるネットワーク統合、またオンプレ環境でのOpenShiftのオートスケールが利用できます。
その他、2020年1月下旬にリリースされたRed Hat Ceph Storage 4をRHOSPからデプロイすることができるようになっており、RHEL8をベースにしたRHOSP16とRHCS4を合わせて使う事でパフォーマンスが向上しつつ運用性が向上しています。

■新機能、変更点

ライフサイクルの変更が行われた

RHOSP16の全体的なサポート期間は5年と変わっておりませんが、各メンテナンスフェーズが遷移するタイミングが変更されています。
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ホストOSがRHEL8に変更されたため、ゲストOSのサポート状況が変わった

RHOSP16ではホストOSにおいてRHEL8を使用しています。
以下の表を確認するとRHEL8がホストOSの場合、サポート可能なゲストOSはRHEL6,7,8、Windows2012R2,2016,2019、SLES10,11,12,15となっています。
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ゲストOSとしてWindows Server 2019サポート

RHOSP16ではWindows Server 2019をサポートしています。RHOSP13においてもWindows Server 2019のゲストサポートがバックポートされました。

大規模環境のためのCells V2

RHOSP16を用いて大規模なシングルクラスタを構成する場合、Cells V2によって従来大規模環境でスケールの観点でボトルネックになりやすかった
DBとMQを各セルに配置することでスケーラビリティを確保することが可能になりました。
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ネットワーク機能を提供するNeutronのデフォルトプラグインがML2/OVSからML2/OVNに変更

RHOSP15よりML2/OVNがデフォルトのネットワークプラグインとなっています。
OVNではGeneveプロトコルを用いてオーバーレイネットワークが構成されており、L2の接続性が向上しています。
また、ML/OVSではDVRを用いて分散ルータを構成していましたが、ML2/OVNでは分散構成が標準です。
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作成済みのCinderボリュームを、インスタンスにアタッチした状態で拡張することが可能

Cinderで作成したボリュームを、in-useステータスつまり稼働中であっても拡張することができます。
この機能が有効であるかどうかはCinderバックエンドで利用するストレージ次第です。

DirectorによるRHCSv4の同時デプロイ

OpenStack Directorは従来よりOpenStackとCephを同時にデプロイすることが可能でしたが、
RHOSP16からは新しいバージョンであるRed Hat Ceph Storage 4をデプロイすることが可能になりました。

Cinderボリュームのクローンにおける暗号化キーの都度変更

Cinderはクローンした暗号化ボリュームの暗号化キーを自動で変更することができます。
ボリューム毎に異なる暗号化キーを自動で利用することになるので、セキュリティの観点での安全性が向上しました。

CinderバックエンドのAvailability ZoneをDirectorでデプロイ時に設定可能になった

従来、Cinderバックエンドを複数のAvailability Zoneを用いて構成する場合は、
Directorがデプロイ後に運用者がAvailability Zoneを指定する必要がありましたが、デプロイ時に指定することが可能になっています。
こちらはサポート状況がTechnology Previewのステータスになっています。

OpenShift4とのインテグレーション

OCP4.3のインフラストラクチャプロバイダーとしてOpenStackを選択する場合、AWSなどパブリッククラウドをインフラとして利用する時と同様に
プロキシ環境、オフライン環境、OCPで使うCoreOSイメージの自動ダウンロード、Machine APIを利用したノードのオートスケールに対応しています。
またOpenStackとOpenShiftのネットワーク機能を統合するKuryrもサポートされています。
https://docs.openshift.com/container-platform/4.3/installing/installing_openstack/installing-openstack-installer-custom.htmldocs.openshift.com

シングルノードデプロイ

RHOSP16のDirectorは、より容易に検証が行えるように1ノードにコントローラ、コンピュート機能を統合したAll-in-oneノードをデプロイすることができます。
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Undercloud minion

RHOSP16から提供されているUndercloud minionという機能を用いることでheat-engineとironic-conductorをスケールアウトすることができるようになります。
UndercloudのパフォーマンスつまりOvercloudのデプロイ、更新速度を向上させることが可能になります。
こちらはサポート状況がTechnology Previewのステータスになっています。
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DirectorからRedfishでOvercloudノードのBIOS変更を実施

UndercloudからOvercloudのサーバのBIOS変更を実施することが可能になりました。
サーバに備わっているRedfish APIをSushyライブラリからコントロールしています。
こちらはサポート状況がTechnology Previewのステータスになっています。

■最後に

OpenStackは初回リリースから10年近くになるソフトウェアになります。IaaSとしての利用に十分な機能、安定性を備え、NFV、Edge、開発者向けの開発環境クラウドなど利用が広がっています。
今回更にエンタープライズ向けのコンテナ環境を提供するOpenShift、オペレータが行うコマンド以外の企業全体のIT業務の自動化に貢献するAnsible Towerとの連携が強化されています。
Red Hatでは恵比寿の社内にOpenStackの検証を行う環境を備えています。
プライベートクラウドを業務に取り入れるために、想定した業務フローとOpenStackが適合するか検証したいがテスト環境が無いといった、プライベート基盤構築を進めるにあたってのPoC環境についてもお気軽にご相談下さい。

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。