Red Hat OpenStack Platform 16.2リリースとライフサイクル

OpenStackやOpenShiftなどのCloud製品を担当しているソリューションアーキテクトの輿水です。

約3ヶ月ぶりにRed Hat OpenStack Platform(以降RHOSP)についてです。今年の9月15日に Red Hat OpenStack Platform 16.2 がリリースされております。前回の記事を書いた時点でリリースされていたのですが、10月開催の「KubeCon + CloudNativeCon North America 2021」に合わせて公式発表するので、公に書くのはちょっと待ってね、という状況でございました。

Red Hat OpenStack Platform 16.2はRed Hat OpenShiftとの緊密な統合を実現し、ネットワーク容量、セキュリティ機能、ストレージ、パフォーマンス、効率の向上とともに、新しいアプリケーションと従来のアプリケーションの両方を並行して実行できるような環境を提供します。

www.redhat.com

OpenShift Container Platformに関して、パブリッククラウドにOpenShift Container Platformをインストールするのと同じ様に、OpenStackによるプライベートクラウドにOpenShiftをインストールして使えるようにするOpenShift on OpenStackという方式があります。最新のOpenshift 4.9はRHOSP 16.2でサポートされます。サポートされるRed Hat OpenStack PlatformとOpenshift Container Platformのバージョンの組み合わせ表は以下の通りです。

access.redhat.com


RHOSPのライフサイクル

RHOSP 16以降は、16.0、16.1のようなマイナーバージョンが存在します。それぞれでサポート期間が異なりますが、RHOSP 16という括りでは16.0の一般提供開始日である2020年2月20日から16.2のELS終了日である2025年4月30日までの5年の長期サポートを提供します。16をご利用になり、2024年以降もサポートが必要な場合は、ELSを利用できる16.2を利用していただく必要があります。

16.2のベースはコミュニティ版Trainで、Ussuriの機能のいくつかがバックポートされています。また、16.1ではホストOSのバージョンがRHEL 8.2でしたが、16.2ではRHEL 8.4になります。

バージョン RHEL 一般提供開始日 フルサポート終了日 サードパーティ認定期間終了日 メンテナンスサポート終了日 ライフサイクル終了日 延長ライフサイクルサポート(ELS)アドオン終了日
フルサポート
16.2 8.4 2021年9月15日 2023年4月30日 2022年5月31日 2024年4月30日 2024年4月30日 2025年4月30日
16.1 8.2 2020年7月29日 2022年4月30日 2021年5月31日 2024年4月30日 2024年4月30日 -
16.0 8.1 2020年2月20日 2020年10月27日 - - - -
延長サポート
13 7.9 2018年6月27日 2019年12月27日 2019年12月27日 2021年6月27日 2021年6月27日 2023年6月27日
10 7.7 2016年12月15日 2018年6月16日 2018年12月31日 2019年12月16日 2019年12月16日 2021年12月15日

ライフサイクルに関する日本語版ドキュメントを見ると「ライフサイクル日付」の表の下付近に小さく「16.1 は、Red Hat Enterprise Linux 8.2 でのみサポートされます。メンテナンスサポートの期間は、延長アップデートサポート (EUS) アドオンサブスクリプションが必要です。」という記載があります。「延長ライフサイクルサポート(ELS)アドオン」ではなくて「延長アップデートサポート (EUS) アドオン」です。「OpneStackを使っていてEUSという単語が出てきたことがあっただろうか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。文章を図にすると以下のようなイメージになります。

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RHOSP 10, RHOSP 13ではメンテンスサポート期間にアドオンサブスクリプションが必要になることはなかったのですが、RHOSP 16.1と16.2ではメンテナンスサポート期間においてアドオンサブスクリプションが必要になります。これはRHOSPとRHELが密接に統合されて、RHELの特定のバージョンを長期にわたって利用・サポートするために必要になっています。

16.1を2022年5月1日以降も利用してメンテナンスサポートを受ける場合は、この延長アップデートサポート (EUS) アドオンサブスクリプションが必要になります。それまでに、16.2へマイナーアップデートしていただければ、アドオンサブスクリプションは必要ありません。なお、16.1のEUSアドオンサブスクリプションは有償になります。16.2のEUSアドオンサブスクリプションについては現時点では未定です。16.1のEUSアドオンサブスクリプションの価格については弊社営業までお問い合わせください。

メンテナンスサポート期間に提供される内容は、これまでと変わりません。フルサポートの内容から「新機能のバックポート」と「追加のパートナープラグインの導入」を除いたサポートを提供します。

16.1から16.2へのアップデート方法は「Keeping Red Hat OpenStack Platform Updated」に記載されています。16.2にアップデートを行う場合は、利用している16.1を最新にしておく必要があります。(日本語版のドキュメントもありますが現時点では16.2-betaの情報になっていますので、最新情報としては英語版のドキュメントを参照してください)

RHOSPアップグレードパス

現在13をご利用中で延長ライフサイクルアドオンを追加していただいている場合は、2023年6月27日まではサポートされますので、その間に16.2以降への移行をご検討ください。13から16.2へのアップグレード方法には、インプレースアップグレードとParallel Cloud Migrationがあります。

  • インプレースアップグレード

    • 既存環境をアップグレードします。追加のハードウェアやサブスクリプションは不要です。
    • アップグレードのためのフレームワークを提供しています。
  • Parallel Cloud Migration

    • 既存環境に並列に最小構成の新規環境を作成し、ワークロードを移行する方式です。追加のハードウェアとそのハードウェア用にRHOSPサブスクリプションが必要になります。
    • この移行方法はお客様環境に依存する点が多いため、弊社のコンサルティングサービスの一環として提供します。
    • ワークロードの移行時に、ワークロードの停止時間が必要になります。

10をご利用の場合は延長ライフサイクルも終了となります。10→13のインプレースアップグレード方法(Fast Forward Upgrade)も提供されております。

13→16において、何らかの理由(3rdベンダープラグインの対応状況やVNFの対応状況など)で13→16.2ではなく13→16.1というアップグレードを選択する場合、Support Exceptionという処理プロセスが必要になりますので、弊社までご連絡ください。

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。