Red Hat OpenStack Platform 13と16の機能差分

OpenStackやOpenShiftなどのCloud製品を担当しているソリューションアーキテクトの輿水です。

このブログで何度か取り上げておりますが、2021年3月の時点でRed Hat OpenStack Platform(以降RHOSP)の最新版は16.1になります。Long Life ReleaseであるRHOSP 13もメンテナンスサポート期間ではありますが、RHOSP 13のメンテナンスサポートは2021年6月27日までです。それ以降でサポートを受けるためにはExtended life cycle support (ELS) add-onが必要になります。ELSを適用した場合、サポート期限は2023年6月27日となります。RHOSPのサポートを継続して受けたい場合は、RHOSP 13のELSを導入いただくか、RHOSP 16にバージョンアップしていただく必要があります。

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access.redhat.com

RHOSP 13とRHOSP 16.1の差分

RHOSP 16では機能拡張やバグフィックスが行われています。拡張されている機能に関してはリリースノートの「機能拡張」をご覧いただくか、詳細については弊社までお問い合わせをいただければと思います。現在既にRHOSPをご使用中で、バージョンアップを検討する場合は、RHOSP 13では使用できていたが、RHOSP 16ではサポートされない機能があるか考慮する必要があります。以下は、RHOSPのリリースノートから抜粋した非推奨・廃止された機能です。非推奨の機能とは、現在はサポートされてはいるが今後サポート外になる予定のものです。

コンポーネント 内容
OpenDaylight 13で初めて導入されましたが、14では非推奨になりました。OSP14のサイクル期間中、OpenDaylightのサポートは継続されバグ修正のリクエストは受け付けられますが、OSP13のライフサイクル終了の時点でサポートは完全に廃止される予定です。
gnocchi (openstack-ceilometer) 15でTelemetryサービスの一部であるgnocchi は非推奨になりました。RHOSPの今後のバージョンでは、gnocchiおよび残りのTelemetryサービスが廃止され、Red Hat Service Assurance Framework(Service Telemetry Framework ) に置き換えられる予定です。
aodh (openstack-ceilometer) 15でTelemetryサービスの一部であるAlarm サービス(aodh)は非推奨になりました。RHOSPの今後のバージョンでは、Alarmサービスが廃止される予定です。
ceilometer client 16.0 ではTelemetryサービスの一部であるceilometer clientがサポートされなくなり、廃止されています。廃止されたのはクライアントとAPIにであり、ceilometer agentは引き続き RHOSPの一部です。
- 15でモニタリングエージェントSensuクライアントサービスは非推奨になりました。 RHOSPの今後のバージョンでは、Sensuクライアントサービスが廃止される予定です。
openstack-tripleo-heat-templates 15でOpenStack Elastic Compute Cloud(EC2)API は非推奨になり、16.0でサポートされなくなりました。directorでは EC2 API のサポートは非推奨になり、今後の RHOSP リリースで廃止される計画です。
openstack-sahara 15でData Processingサービス (sahara)は非推奨になり、16.0で廃止されました。13および15でData Processingサービスのサポートを継続して提供します。
TripleO Red Hat OpenStack director (TripleO)は、OpenShiftインストールの Playbook (openshift-ansible パッケージで提供される) および Orchestrationサービス (heat))テンプレートを使用した、ベアメタルノードへの Red Hat OpenShift Container Platform 3.11 クラスターのデプロイをサポートしなくなりました。ベアメタルノードに OpenShift 3.11 をデプロイするには、Orchestrationサービスのテンプレートを使用せずに、OpenShift インストールのPlaybook だけを使用します。
openstack-tripleo-heat-templates 15 では、controller-v6.yamlファイルは必要なくなりました。controller-v6.yaml で定義されていたルートはcontroller.yaml で定義されるようになりました。
- 15ではNova vCenterプラグインは非推奨になりました。このプラグインは16 で廃止される予定です
- 16.0で環境ファイル /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-bootstrap-environment-rhel.yaml が廃止されています。この環境ファイルは、事前にプロビジョニングされたノードを使用する場合に使用されていました。
- 16.1でRed Hat Ceph Storage クラスターの管理者キーリングシークレットをカスタマイズできなくなりました。その代わりに、初期のデプロイメント時に管理者キーリングシークレットが無作為に生成されます。
Red Hat OpenStack Platform Telemetry

RHOSPのTelemetryについて、16以前はCeilometer・gnocchi・aodhを利用してTelemetryサービスを提供していました。データの保存場所やポーリングの間隔などをデフォルトで構成した場合OpenStack Controllerに負荷がかかるため、RHOSP 16では従来のTelemetryサービスはデフォルトではdisableになっています。代わりにService Telemetry Frameworkという仕組みを推奨しています。従来のTelemetryサービスは非推奨にはなっていますがRHOSP 13と同様にenableにすることは可能で、サポートもされますが、今後はService Telemetry Frameworkの利用をお薦めしています。Service Telemetry Frameworkの仕組みについては別記事でご紹介します。

従来のRed Hat OpenStack Platform Telemetryの仕組み

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RHOSP 16において、RHOSP 13と同様のTelemetryサービスを使う場合は、従来どおりのTelemetryを有効にするためのyamlファイルが用意されているので、OpenStack Directorを用いてOpenStack環境をデプロイする際に、そのファイルを指定してデプロイします。詳細は「Deployment Recommendations for Specific Red Hat OpenStack Platform Services」を参照してください。

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。