【令和6年最新版】JBoss EAP 7.4からJBoss EAP 8.0への移行

OpenShift SSA の瀬戸です。

JBoss EAP 8がリリースされてから4ヶ月がたちました。8.0.1パッチも提供され、そろそろ移行をお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

以前、JBoss EAP 7.x から JBoss EAP 8-Beta への移行方法という翻訳記事でベータバージョンでの移行方法を紹介しましたが、1年以上の時間が経ち、状況が変わってきてしまっているのであらためて移行方法をまとめたいと思います。

この時に使用したMigration Toolkit for Runtimes(以下MTR)の廃止が決まっており、更新がされなくなってしまっており、最新のアップストリームの更新がとりこまれていません。そのため、最新の情報を扱えなくなっています。そこで、今回はアップストリームのWindupを使用して修正個所の特定をしていきます。

windup.github.io

さらに、JBoss EAPは標準のJakarta EE仕様に準拠しているため、Red Hatが関与していないOSSを使う事でも移行を行うことができます。今回は、Eclipse Transformer を使って、ユーザーアプリケーションを移行します。

projects.eclipse.org

この記事では以下の順番で移行の説明をしていきます。

JBoss EAP 7.4環境のセットアップ
JBoss サーバー移行ツール(JBoss Server Migration Tool)を使ってのサーバー構成の移行
Windupを使用しての移行箇所の特定
Eclipse Transformerを使ってのユーザーアプリケーションの修正

この記事では以下のツールを使用しています。

Windows 11 Professional 23H2
Openjdk 17.0.10 2024-01-16(Temurin) https://adoptium.net/temurin/releases/
Maven 3.9.6 https://maven.apache.org/
Podman Desktop https://podman-desktop.io/downloads
Git 2.44.0 https://git-scm.com/download/win

また、Red Hatアカウントを必要とします。Red Hatアカウントを持っていない場合は、Red Hat Developer Programに参加することで作成できますので、先に参加してください。

rheb.hatenablog.com

注意: Red HatではアップストリームのOSSの直接のサポートは行っておりません。ただし、今回の内容で移行した後の本番環境でのサポートなどは承っています。また、移行に対するご不明点がある場合は弊社営業もしくはパートナー企業にお問い合わせください。

JBoss EAP 7.4環境のセットアップ

サーバー構成(standalone.xmlなど)の移行についてはベータ版から変更はありません。引き続き同じ方法が使用できます。ここでは、古いEAP7.4用のサンプルアプリケーションのデプロイも兼ねてEAP7.4のサーバーをセットアップし、その内容をそのままEAP 8.0へ移行します。

PostgreSQL のセットアップ

今回のアプリケーションではPostgreSQLを使用しているので、PodmanでPosgtreSQLを実行します。

コマンドプロンプトを開いて以下のコマンドを入力します。

podman image pull docker.io/postgres
podman run --name postgres -e POSTGRES_PASSWORD=postgres -p 5432:5432 -d postgres

※PostgreSQLのユーザー名、パスワードとしてそれぞれpostgresを、待ち受けポートとして5432が使用されています。

※今回起動したPostgreSQLは最後で削除します。削除しない場合はリソースを消費し続けます。

また、PostgreSQLのJDBCドライバをダウンロードして、ローカルに保存しておきます。以下からダウンロードできる最新版を使用してください。

jdbc.postgresql.org

JBoss EAPサーバーのセットアップ

JBoss EAP 7.4 zip ディストリビューションをダウンロードします。ディストリビューションをローカルフォルダー(例: C:\apps\jboss\jboss-eap-7.4) に解凍します。

developers.redhat.com

コマンドプロンプトからEAP_HOME 環境変数を設定して、JBoss EAP 7.4を起動します。サーバー構成ファイルとしてはstandalone-full.xmlを指定します。

set EAP_HOME=C:\apps\jboss\jboss-eap-7.4
%EAP_HOME%\bin\standalone.bat --server-config=standalone-full.xml

十分なCPU、メモリが積まれている場合は10秒以内に起動します。このあと、このコマンドプロンプトは開きっぱなしにしておいてください。

もう一つコマンドプロンプトを開いて、管理CLI (jboss-cli)を起動します。

set EAP_HOME=C:\apps\jboss\jboss-eap-7.4
%EAP_HOME%\bin\jboss-cli --connect

管理CLI からtopicの追加とJDBCドライバのインストールを行います。

※<PATH_TO_JDBC_DRIVER>\postgresql-XX.X.X.jar はpostgresの設定時にダウンロードしたpostgresqlのドライバを指定してください。

jms-topic add --topic-address=orders --entries=[/topic/orders]

module add --name=org.postgres --resources=<PATH_TO_JDBC_DRIVER>\postgresql-XX.X.X.jar --dependencies=javax.api,javax.transaction.api
/subsystem=datasources/jdbc-driver=postgres:add(driver-module-name=org.postgres, driver-name=postgres)

data-source add --name=postgresDS --jndi-name=java:jboss/datasources/CoolstoreDS \
--driver-name=postgres \
--connection-url=jdbc:postgresql://localhost:5432/postgres \
--user-name=postgres --password=postgres

これでサーバーの設定が終わったので、アプリケーションのデプロイを行います。以下のリポジトリからソースコードをダウンロードします。

github.com

このリポジトリにはRed Hatがワークショップで使用するcoolstoreというアプリケーションをJBoss EAP 7.4とJBoss EAP 8.0で動作できるように変更したものが含まれています。今回はそのうちJBoss EAP 7.4で動作するものを使用します。

コマンドプロンプトを使用して mtr-example-eap7.4to8.0\eap7.4\coolstoreに移動してMavenを使用してコンパイル、デプロイを行います。

mvn package
mvn wildfly:deploy

※コンパイルに失敗する場合は、インターネットにつながっているか、OpenJDKのバージョンは17を使用しているかを確認してみてください。

※デプロイに失敗する場合はPostgreSQLが起動しているか、topic、jdbcドライバの設定を行っているかを確認してください。

デプロイに成功すると、 http://localhost:8080/ にアクセスすることで、以下のような画面を表示することができます。

これでEAP7.4上で動くアプリケーションのセットアップは終了です。

管理CLIを起動していたコマンドプロンプトを閉じます。

JBoss EAP 7.4を起動した最初のコマンドプロンプトでCTRL+Cを押してサーバーを停止します。そのあとバッチジョブを終了するか聞かれるのでYを押してください。

JBoss EAPを起動していたコマンドプロンプトとコンパイルを行ったコマンドプロンプトはこの後も使用するため、そのままにしておきます。

JBoss サーバー移行ツール(JBoss Server Migration Tool)を使ってのサーバー構成の移行

最初にJBoss EAP 8.0本体とJBoss サーバー移行ツール(JBoss Server Migration Tool)をダウンロードしてきます。

JBoss EAP 8.0.0 zip ディストリビューションをダウンロードします。ディストリビューションをローカルフォルダー(例: C:\apps\jboss\jboss-eap-8.0) に解凍します。

jboss-eap-8.0.0-server-migration zip ファイルをダウンロードします。ファイルをローカルフォルダー(例: C:\apps\jboss\jboss-eap-8.0\jboss-server-migration) に解凍します。Server Migration と書かれたリンクからダウンロードすることが可能です。

developers.redhat.com

※注意: JBoss Server Migration Toolは以前においてはJBoss EAP本体と一緒に配布されていましたが、このバージョンから別個に配布されるようになりました。

移行を始めるために、移行前の環境と移行後の環境がわかるように環境変数を設定します。

前の手順で設定したEAP7.4のフォルダをEAP_PREVIOUS_HOMEにし、EAP_HOME にEAP8.0のフォルダを設定します。

# set EAP_HOME=C:\apps\jboss\jboss-eap-7.4
set EAP_PREVIOUS_HOME=%EAP_HOME%
set EAP_HOME=C:\apps\jboss\jboss-eap-8.0

JBoss Server Migration Toolを使って先ほどstandalone-full.xmlを使って起動したJBoss EAP7.4の設定を移行します。設定した内容はstandalone-full.xmlに含まれています。これを使う事でデータベース用のドライバや、topicの設定などが移行されます。

※JBoss Server Migration ToolはEAP 7.4にも同梱されていますが、EAP 8.0のものを使用してください。EAP 7.4に同梱されているものはEAP 8.0への移行がサポートされていません。

※今回はJDBCドライバをそのまま移行していますが、実運用環境ではデータベースの移行を伴う場合があり、その場合はJDBCドライバのバージョンアップが必要になります。

%EAP_HOME%\jboss-server-migration\jboss-server-migration -s %EAP_PREVIOUS_HOME% -t %EAP_HOME%

サーバー移行ツールは、移行プロセス中にいくつかの質問をします。

----------------------------------------------------------
----  JBoss Server Migration Tool  -----------------------
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Retrieving servers...
 INFO  SOURCE server name: JBoss EAP, version: 7.4.0.GA.
 INFO  TARGET server name: JBoss EAP, version: 8.0.0.GA.

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Server migration starting...

 INFO  --- Migrating modules requested by environment...

 INFO  No modules to migrate.

Migrate the source's standalone server?
yes/no?

standalone-full.xmlはstandalone serverに含まれるので[yes]を指定します。

 INFO  --- Migrating standalone server...

 INFO  Source's standalone content migrated.

 INFO  Source's standalone configurations found: [standalone-full-ha.xml, standalone-full.xml, standalone-ha.xml, standalone-load-balancer.xml, standalone.xml]

Migrate all configurations?
yes/no?