Red Hat Enterprise Linux 5 ELS終了および Red Hat Enterprise Linux 6の通常サポート終了に備える

Red Hatの森若です。

Red Hat Enterprise Linux 5 ELS終了および Red Hat Enterprise Linux 6の通常サポート終了について、公式にまとめたWebページを公開するよう準備しているのですが、まだしばらく時間がかかりそうです。そのため個人としてまとめた記事を書きます。

ご注意

このblog記事は読者の方に便利なようまとめていますが、森若個人による非公式なもので会社としてのものではありません。抜け漏れ間違いなどあるかもしれません。文責は全て森若個人にあります。

公式の情報が必要な場合は以下ページをご確認ください。 access.redhat.com

※2020年6月2日追記。公式のFAQが出ました。

access.redhat.com

access.redhat.com

前提知識

ELP

Red Hat Enterprise Linuxはサポート期間がリリース後10年間です。サポート期間を過ぎると、Extended Life Phase (ELP)と呼ばれる期間に入ります。

ELPでは、過去に出荷されたrpmパッケージの入手や、既存のナレッジに該当する問題を問いあわせることは可能なものの、ソフトウェアのメンテナンスは終了し、セキュリティ上の深刻な問題が発見されたり、お客様のシステムで回避不可能かつ深刻な問題が発生しても新規の修正は一切出荷されません。

ELS

既に廃業してしまったISVの製品を使いつづける必要があり移行先が存在しないなど、どうしてもRHELの特定メジャーバージョンを使い続けないといけない場合があります。そのようなケースのために、特定の期間、非常に制限された一部のパッケージについてだけメンテナスを維持し、root cause analysisを含めたサポートを提供するアドオン製品がExtended Life-cycle Support(ELS) です。

ELSでサポートされるパッケージは非常に限定されています。そのリストはELS提供開始の直前(または開始後)に公開されます。この記事を書いている時点で提供中の RHEL 5 ELS でメンテナンスされるパッケージのリストは以下で公開されています。

access.redhat.com

※2020年4月23日追記: RHEL 6 ELS に含まれるパッケージのリストが公開されました

access.redhat.com

RHELには多くのサーバソフトウェアが含まれていますが、ほとんどはELSの対象になりません。 含まれるパッケージのリストではイメージをつかみにくいかもしれませんので、以下にRHEL 5のELSに含まれないものの例を挙げます(ごく一部です)。

httpd, sendmail, vsftpd, bind, squid, postgresql, mysql, openssh-server, iptables, quota, net-snmp, cron, samba, dhcp, dhcpv6-client, openjdk, openldap-server

RHEL ライフサイクル

2020 年 11 月 31 日 に、RHEL 5 の ELSと、RHEL 6 の メンテナンス 2が 終了します。

access.redhat.com

各バージョンについてELSの予定が異なりますので簡単にまとめます:

  • RHEL 5 について、ELSを提供中です。2020年11月までの提供です。
  • RHEL 6 について、ELSの提供が予定されています。2024年6月までの提供です。
  • RHEL 7 について、ELSの提供予定は未公表です。提供するともしないとも決まっていません。
  • RHEL 8 について、ELSの提供が予定されています。期間は未定です。

どうするのがいいの?

2020年11月末までに、システムを更改することをお勧めいたします。 できればRHEL 7またはRHEL 8へ移行していただければありがたいですが、他社製品、アプライアンス、SaaSなども選択肢にはいるかと思います。2,3年以内に利用終了することが確定しているのでなければ、ライフサイクルを考えると移行先にはRHEL 8が良いです。

現在RHEL6を利用中で、どうしても移行できないもしくは移行が間にあわない場合は、緩和策としてELSを利用することが考えられます。しかし前述のとおり通常サポートの期間中と比べて非常にサポート範囲が狭くなる点と、サポート範囲が未発表である点に注意が必要です。

RHEL 7 または RHEL 8 へ移行する場合に便利な情報

以下は RHEL 7 または RHEL 8 へ移行する場合に便利な情報です。

Red Hat Insights

2019年5月から、RHEL には Red Hat Insightsが同梱されるようになりました。これはSaaS形式で提供される診断サービスで、Red Hatのナレッジをもとに作成されたルールで既知の問題を探し、レポートします。本来的には継続的に使っていくものですが、新しく構築するシステムをRed Hat Insightsで1回だけチェックするような使いかたでも、トラブルを減らすための役に立ちます。

Red Hat Insightsについては以下の記事にもうすこし具体的な紹介があります。 rheb.hatenablog.com

in-place upgradeツール

Red Hatの推奨は、別途新しいシステムを構築して移行することですが、ハードウェア1台だけで利用中などの場合にはむずかしいです。RHEL 6から7、7から8へシステムをアップグレードするツールを提供しています。ご利用前にバックアップを取るなどの注意をおねがいいたします。

トレーニング

これからはじめてRHEL 7やRHEL 8を利用しようという場合、コマンドの違いなどでとまどうことも多いかと思います。特にRHEL 6から7ではsystemdが導入されて、運用時に使うコマンドのふるまいがかわりました。

Red Hatでは公式のトレーニングを提供しており、教室またはオンラインで受講できます。オンラインで全てのコースを1年間受講できる Red Hat Learning Subscription もあります。

日本での開催予定は以下ページ下部にある「最新コーススケジュール」にて確認できます。 jp-redhat.com

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。