Red Hat OpenStack Platform Update

OpenStackやOpenShiftなどのCloud製品を担当しているソリューションアーキテクトの輿水です。

こんなに暑くなる前のGW頃、今年の5月11日〜12日に、Red Hat Summit 2022 がハイブリッド形式で開催されました。遅くなりましたが A Red Hat OpenStack Platform roadmap セッションで今後のロードマップの話がありましたので、とっても簡単にご紹介します。

Red Hat Summit 2022 のセッションは今年の年末までオンデマンドで見ることができます。セッションを見るためには アカウントの作成が必要になります。登録ページ

セッションのリンクは「A Red Hat OpenStack Platform roadmap」です。


30分のセッションで、内容としては、前半10分はRed Hatのハイブリッドクラウド戦略や取り組みについて説明しており、後半20分でRed Hat OpenStack Platformのロードマップの説明をしています。

前半

  • Red Hatが行った2021年の顧客への調査ではクラウド戦略としてプライベートクラウドとパブリッククラウドファーストという結果になっている
  • OpenStackが果たす役割として、プライベートクラウドとマルチテナンシー機能を持ち、多数のオプションを提供できる基盤である
  • ハイブリッドクラウドを採用する主なモチベーションのひとつは、ワークロードを適切なIT環境に動的に移動することができる点
  • コストやパフォマンス、セキュリティ、データの主権(sovererigntyと言っている)など、オンプレミスのシステムや蓄積された情報をクラウドに移行する際には、技術的、法的な課題がある
  • プライバシーやデータの扱いに関しては国ごとに法律が異なり厳格な国もあるがRed Hatとしては広範囲をカバーし基準を満たすよう努力している
  • OpenStackコミュニティでの、レビューやパッチの数でわかるように、オープンソースにおいても貢献している
  • Red Hat OpenStack Platformの今後の発表は今年後半に行われる予定

後半

「17.0 17.1 18+」の一覧表示があり、ざっくりと17.0の説明。

リリース時期は明言されてないですが、Red Hat OpenStack Platform 17.0 17.1というのが予定されていることがわかります。16をご検討された方はご存知だと思いますが、16には16.0 16.1 16.2のようにマイナーリリースが存在します。その中で16.0はサポート期間が半年程度でした。17に関しても、17.0というサポート期間が短いものが存在し、その後、17.1というサポート期間が長いマイナーリリースが出てくるということです。

「画面の機能一覧を貼って欲しい」と思われるかもしれませんが、Red Hat Summit 2022 に参加した人のみ、セッションを見ることができる状態なので、表をじっくり見たい方は、アカウント登録をして、ぜひオンデマンドセッションを見てください。

機能一覧はCompute,Storage,Networkingなどでカテゴライズされております。ちなみに、これは決して確定情報ではなく、あくまで予定であり、正式発表の際には削除されたりTechPreviewになったりするものもありますのでその点はご容赦ください。

  • Compute:ワークロードに対してより多くのオプションをもたらすような拡張、例えばAIやMLなどアクセラレーションが必要なワークロードへの対応
  • Storage:ストレージ機能の改善や強化。Cephとのインテグレーション等
  • Networking:OVN関連の機能拡張、これはOpenStackに限ったことではなくRed Hatの戦略であり、OVNに重きをおいている
  • Day1:OpenStackのDeploymentに関するもの。OpenStack Directorの機能改善
  • Day2:デプロイされたOpenStack環境の保守運用に関する改善。テレメトリーもここに含まれる。
  • Upgrades:OpenStackのアップグレードの仕組みの強化、アップデートの改善
  • Security:
  • NFV:OVS-DPDK関連
  • Edge:エッジサイトにおけるのimageサービスやストレージ機能の増強
  • Shift on Stack:OpenShift on OpenStackに関連する機能改善
  • High Availability:主にコントローラーでのRabbitMQやMariaDBに関する改善、将来的な視野にはDisaster Recoveryもあり。
  • Scale:OpenStackの1クラスタあたり750ノード程度、Shift on Stackでは300ノードくらいを考慮
アップグレード

多くの方の関心事は、このアップグレードではないかと。 RHOSP16では、RHOSP16全体としてはロングライフですが、16.0はサポート期間が短いものでした。RHOSP17に関しても同様になります。17.0はサポート期間が短いため、この環境ではワークロードのテストや開発、3rdPartyプラグインの認定作業を行っていただき、アップデートして、17.1を利用するのが良いです。

現在16をお使いの方がアップグレードする場合、サポートされるのは16.2から17.1へのアップグレードの予定です。ユーザーが、環境をアップグレードする際に懸念するのが、RHOSPをアップグレードする際に、RHELバージョンのアップグレードを伴いノードの再起動が必要になることです。また、何らかの理由でロールバックする可能性を考える必要もあります。大規模なクラウド環境では、すべてのノード(Compute Node)を同時じタイミング(同じメンテナンスウィンドウ)で再起動することは難しい場合があります。これに対応するために、RHOSPのコンポーネントのみを17にアップグレードし、同時にはノード再起動は行わない方法を考えています。ノード再起動は別のメンテナンスウィンドウで順次実施します。この場合、RHEL8.4のCompute NodeとRHEL9のCompute Nodeが混在している状態で、RHOSP17が稼働することになります。このような混在状態は、13→16の時はサポート例外としていたものを、サポートすることを考えています。これによって、初めにController Nodeと数台のCompute Nodeのアップグレードを行い、メンテナンスウィンドウを調整し、Compute Nodeを分けて再起動することができ、リスク回避も可能になると考えます。

OSP Director Operator

AWSやAzureなどのパブリッククラウド上にOpenShift環境を構築するのと同様に、プライベートクラウドであるOpenStack上でOpenShiftを稼働させる「OpenShift on OpenStack」はRHOSP13の頃からありましたが、このOSP Director Operatorというものは、この逆で、OpenShiftでOpenStackを扱おうとするものです。16.2ではテクノロジープレビューだったものが、17では正式サポートになる模様です。

OpenShift Container Platform を使っている方には馴染みがあると思いますが、Operatorはプラットフォームを構成する部分の管理から、マネージドサービスとして提供されるアプリケーションに至るまで、スタックのあらゆるレベルで自動化を提供するものです。

Red Hat OpenStackをインストールする際にOpenStack Directorを使用しますが、その仕組をOperetorにしたというところです。

Controller Nodeは仮想化され、OpenShift Virtualization上に仮想マシンとして作成されます。 また、Compute Nodeは、仮想化はできないので、OpenShiftのベアメタル管理(Metal3)を使用して、デプロイします。RHOSPサービスの基礎となるネットワークも設定します。

実際にOSP Director OperatorをOpenShift環境にインストールすると以下の図のようになります。事前にOperator HubからOpenShift VirtualizationやSR-IOVネットワーク Operatorもインストールしてます。

OpenStack環境を構築するには、この後、従来のDirectorでも書いていたようなyamlをいろいろ書く必要があるわけで、即・簡単です、とは言いえませんが、ocコマンド等でOpenShiftのコンテナを操作するのと同じような感覚で、OpenStackを操作できるのは大きなメリットだと感じます。

また、OpenStack Controllerの仮想化のサポートはこれまではvirtual control plane on RHV(Red Hat Virtualization)一択でしたが、このRHVのEOLが2026年8月31日と発表されているので、今後のOpenShift Virtualizationの動向はお伝えしていければ、と思います。

また、明日から下期ということで、そう遠くないうちにRHOSP17がリリースされたら、ご紹介する予定です。

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。