Red Hat Enterprise Linux 8 リリース!

Red Hatの森若です。 2019年5月7日に、Red Hat Enterprise Linux 8 がリリースされました。

Red Hat Enterprise Linux 8 概要

Red Hat Enterprise Linux 8 は以下のような特徴があります。

  • Fedora 28, linux 4.18 をベースとして開発されたエンタープライズむけOS
  • x86_64 だけでなく ARM 64, Power, Zの4種類のアーキテクチャで動作
  • 2029年5月までの10年間にわたる長期ライフサイクル
  • パートナー各社との連携により、認定ハードウェア、認定仮想化環境、認定クラウド環境上でのサポートを提供
  • エンタープライズでの利用にあわせた、統合管理製品や高可用性クラスタなどを提供
  • Red HatのIaaS基盤、コンテナ基盤、ストレージ製品などの基盤となる

Red Hat Enterprise Linux 7 からの大きな違い

  • Server, HPC, Desktopなどの製品種別により異なっていたソフトウェアの配布方法を統一しました。RHEL 8の製品種別による差異は、サポートされるユースケースの違いです。
  • マイナーリリースを6ヶ月おきに出荷、メジャーリリースを3年おきに出荷します
  • 同一ソフトウェアの複数バージョンを提供します
    • 一部のmoduleはサポートが短期間です(2年、3年)
    • moduleの仕組みを使い、RHELの10年ライフサイクルと同期しない、頻繁なアプリケーションの更新を提供します。
    • RHELにRed Hat Insightsを同梱し、自動的な診断サービスを利用できます

Red Hat Enterprise Linux 8を簡単に紹介するスライドを以下に公開しています。 Red Hat Enterprise Linux 8 ご紹介 - Speaker Deck

今回Red Hat SummitでRHEL 8リリースとともに多数の発表がありました。以下に簡単にまとめます。

予測可能なリリースタイミング

Red Hat Enterprise Linux 8 からは、マイナーリリースおよびメジャーリリースの出荷タイミングについてポリシーが変更されました。

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マイナーリリースを半年ごとに、メジャーリリースを3年おきに出荷します。このようにあらかじめ決まったタイミングでリリースを行うことで、事前にアップデートなどの計画を立てる際にマイナーバージョン出荷時期を折り込みやすくなります。

EUSは8.1, 8.2, 8.4, 8.6, 8.8 に出荷予定です。

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RHEL8リリース予定

同一ソフトウェアの複数バージョンを提供

システム導入に最低限必要なパッケージを集めたBaseOSと、BaseOSを基盤として動作するパッケージを集めたApplication Streamsという仕組みを導入します。Application Streamsでは同一ソフトウェアの複数バージョンを並行して提供します。さらに頻繁に新しいバージョンのソフトウェアを提供します。Application Streamsで提供される一部のコンポーネントのライフサイクルはRHELの10年間ではなく、2年から5年の期間に設定されます。

これはRHEL 7までに存在したSoftware CollectionsおよびDeveloper Toolsetの後継となるものです。1つのシステムに複数バージョンを同時にインストールすることはできませんが、利用方法にsclコマンドなどの特別な工夫は不要です。1つのシステム内で複数バージョンを併存させたい場合には、それぞれを独立したコンテナ内で利用します。

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Red Hat Insightsを同梱

Red Hat InsightsはSaaS型のシステム診断サービスです。典型的な設定上の問題や既知の脆弱性、ソフトウェア、ファームウェア、ISV製品の問題などを検出するだけでなく、これらに対して適切な対応方法を提示し、一部の問題については対応用のAnsible Playbookを生成する機能も提供します。

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今回、Red Hat Enterprise Linux のサブスクリプションに Red Hat Insightsが同梱されることが発表されました。RHEL 8である必要はなくRed Hat Insigtsが対応しているバージョン(RHEL6, RHEL 7)で利用できます。既に Red Hat Insights をご利用のお客様は、今後サブスクリプションの更新をする必要がなくなります。

Universal Base Imageの提供

Universal Base Image は、Red Hat Enterprise Linux をベースとしたコンテナイメージです。このコンテナイメージは自由に加工・再配布が可能です。そのため、このイメージをベースとして自作のソフトウェアを含むコンテナイメージを実装して自由に配布・転載することも自由に可能です。

これは主にOSSプロジェクトやISVが自作プログラムをコンテナイメージで配布するために利用することを意図して作成されています。

yumにより追加のパッケージを導入することが可能ですが、UBI用のリポジトリで利用できるパッケージはRHELのパッケージ全てではなくサブセットが提供されています。もしあなたのソフトウェアに必要なパッケージが存在しない場合、Red Hat のBugzillaからパッケージ追加をリクエストすることが可能です。

UBIは、Red Hat製品でない各種コンテナ環境で実行しても特に費用はかかりません。さらにOpenShiftやRHELなど、コンテナ基盤となるRed Hat製品ではUBI部分までサポート対象となります。

今まで契約上の課題等のためにCentOSを利用してコンテナイメージを作成していた方は、UBIに乗り替えることでセキュリティfixがを早く受けとれます、Red Hat製品上でベースイメージ部分についてサポートを受けられるようになります。

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まとめ

  • 2019年5月7日にRed Hat Enterprise Linux 8 がリリースされ、利用可能になりました
  • 同梱ソフトウェアが更新・置き換え・撤廃されただけでなく、配布方法、リリース頻度、新しいソフトウェアの追加、Insightsによる診断サービスの同梱と、ソフトウェア以外の変更点が多数あります
  • 同時に発表されたUniversal Base Imageはコンテナイメージでのソフトウェア配布に便利に利用できるだけでなく、Red Hat製品上ではサポートを受けられるため非常に有用です

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。