RHELのスペシャリストソリューションアーキテクトの田中司恩(@tnk4on)です。
2025年7月、Red Hatは、企業・組織内の開発者向けに、Red Hat Developer Programを介して「Red Hat Enterprise Linux for Business Developers」という新たな無料サブスクリプションを発表しました。
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、安定性、信頼性、セキュリティを提供するエンタープライズLinuxプラットフォームとして世界をリードしています。開発者がこの強力なプラットフォームを無料で利用できるように、Red Hatは複数の無料サブスクリプションを提供していますが、特に個人の開発者か、組織内の開発者かによって選ぶべきものが異なります。
開発者向けのRHELサブスクリプションの紹介ページはこちら。 www.redhat.com
本記事では、既存の Red Hat Developer Subscription for Individuals を基準に、新しいRHEL for Business Developersがどのような開発者に最適か、その違いを解説します。
1. Red Hat Developer Subscription for Individuals
Red Hatは、開発者向けのRHELの無償サブスクリプションとしてRed Hat Developer Subscription for Individualsを提供しています。これは、個人の利用を主な目的として設計されています。
Red Hat Developer Subscription for Individualsの特徴
| 特徴 | Red Hat Developer Subscription for Individuals |
|---|---|
| 主な対象者 | 個人開発者 |
| 主な利用目的 | 個人的なプロジェクトや実験を目的とした開発、テスト、またはプロダクション(本番)利用 |
| 提供範囲 | RHEL (x86_64, ARM64) (Satelliteなし)、その他のRed Hatソフトウェア |
| エンタイトルメント数 | 1ユーザーあたり16ノード(インスタンス)まで |
| 取得・管理方法 | セルフサービスモデルで、個人が管理する |
Red Hat Developer Subscription for Individualsの最大の特徴は、個人利用に限り、開発だけでなくプロダクション用途にも利用できる点です。また、「 Red Hat Developer Subscription」という名前が示す通り、RHEL以外のソフトウェアも含まれています。 ただし、個人の利用を前提をしており、組織内での利用用途には使えない点に注意が必要です。
2. 新しい選択肢:RHEL for Business Developers
2025年7月に発表されたRHEL for Business Developersは、組織内でRHELを開発・テストに使用したい企業開発者のニーズをカバーします。
Red Hat Developer Subscription for Individualsとの比較
| 比較項目 | Red Hat Developer Subscription for Individuals | RHEL for Business Developers |
|---|---|---|
| 利用目的 | 個人利用(開発、テスト、プロダクション利用可能) | 組織内の開発およびテスト用途のみ |
| エンタイトルメント数 | 1ユーザーあたり16インスタンスまで | 1ユーザーあたり25インスタンスまで |
| 対象者 | 個人開発者 | 企業や組織内の開発者 |
| 提供ソフトウェア | RHEL (x86_64, ARM64) (Satellite除く)、その他のRed Hatソフトウェア | RHEL(全アーキテクチャ対応)(Satellite除く) |
| サポート | セルフサポート | セルフサポート |
重要なポイント:
- 利用目的の明確化: RHEL for Business Developersは、企業や部門レベルのプロジェクトの開発・テスト用に費用ゼロ(no-cost)で利用できます。これにより、開発者はIT部門が本番環境向けに承認したのと同じOS上で開発を開始できます。
- エンタイトルメントの増加: RHEL for Business DevelopersはRed Hat Developer Subscription for Individualsよりも多い25エンタイトルメントを提供します。これは、開発者が物理、仮想、またはクラウドベースのインスタンスを25個まで利用できることを意味します。
- 統合ツールの強化: RHEL for Business Developersには、プロアクティブな問題特定、脆弱性アラート、稼働時間最適化のためのガイダンスを提供する統合分析および修復ツールであるRed Hat Insightsが含まれています。また、コンテナ開発ツールであるPodman Desktopとの連携や、Windows Subsystem for Linux (WSL)との統合機能も含まれます。
RHEL for Business Developersの始め方
個人向けのRed Hat Developer Subscription for Individualsと同様に、Red Hat Developerのサイトから簡単に登録できます。
Red Hat アカウントを取得し、ログインしたた状態で下記の「Access now」ボタンを選択するだけで、自動で登録が完了します。



サブスクリプションの更新は、Red Hat Developer Subscription for Individualsと同様に年次更新です。
サポートの利用について
RHEL for Business Developersは基本的にセルフサポートですが、追加のサポートが必要な場合、Red Hat Developer Subscription for TeamsサポートSKUを購入することで、サポートをオプションで追加できます。例えば、25人の開発者向けの「Professional (RH02253)」サポートSKUは、開発に関する質問に限定されますが、2営業日以内のSLAを提供しています。詳細はRed Hatの担当営業までご確認ください。
3. 大規模環境の選択肢:Red Hat Developer Subscription for Teams
Red Hat Developer Subscription for IndividualsやRHEL for Business Developersがセルフサービスや個人/小規模チーム向けであるのに対し、Red Hat Developer Subscription for Teamsは、より大規模で集中管理が必要な組織に適したサブスクリプションです。
Red Hat Developer Subscription for Teamsは、ハイタッチな営業主導型のオファリングであり、個人での申し込みはできません。
- 大規模環境の管理: Red Hat Developer Subscription for Teamsは無制限のエンタイトルメントを提供し、Satellite管理にも対応しています。
- 集中管理: RHEL for Business Developersでは開発者自身が年次更新を管理する必要がありますが、Red Hat Developer Subscription for Teamsでは企業が集中管理します。
- 対象: 大量の組織内開発ユーザーを抱える企業は、IT部門がサブスクリプションを中央で管理しやすくなるRed Hat Developer Subscription for Teamsプログラムへの移行を推奨します。
まとめ:あなたの開発環境に最適なのは?
| 選択肢 | 最適な利用シーン |
|---|---|
| Red Hat Developer Subscription for Individuals | 個人が趣味やスキルアップ目的で利用し、小規模な本番環境でも使いたい場合。 |
| RHEL for Business Developers | 組織内の開発者が、本番環境と同じRHEL環境を無料・セルフサービスで、導入の障壁なしに開発・テストに利用したい場合。 |
| Red Hat Developer Subscription for Teams | 大規模なIT部門が、集中管理ツール(Satellite)や無制限のノード数を用いて、全社の開発環境を管理・標準化したい場合。 |
RHEL for Business Developersは、あらゆる企業の開発者がコスト障壁なしに、安定したエンタープライズプラットフォーム上でアプリケーションを迅速に構築・デプロイするための理想的な手段を提供します。今すぐdevelopers.redhat.comからRHEL for Business Developersを始め、RHELを使って開発を加速させましょう!