レッドハットのソリューションアーキテクトの森です。
今回は、業務改革(BPR)の進め方のポイントについてのお話です。
昨年は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により、今までの“当たり前”に大きな変化が訪れ、Withコロナ、Afterコロナを意識した働き方の改革の必要性を認識した年になりました。
日本においては、政府は2021年9月のデジタル庁の設立に先立ち、昨年12月に閣議決定をした「デジタル・ガバメント実行計画」の中でも、業務改革(BPR)の徹底を行うとの方針を打ち出しています。また、民間企業の間でもこれまで以上にDX化が推進していくと考えられます。
業務改革(BPR)とは?
BPR(Business Process Re-engineering)は、そのまま日本語に直訳すると、「業務プロセスの再設計」となります。 つまり、業務プロセス全体とプロセスに関連する業務を見渡しながら、生産性やQCD(Quallity,Cost,Delivery)を低下させている課題と向き合い、 抜本的な改革を目指す取り組みを意味します。
このBPRが大々的に取り上げられて、多くの企業で導入が図られることになったことの背景には、 1990年代前半に、マイケル・ハマー&ジェームス・チャンピーの共著として発表された『リエンジニアリング革命』の存在があります。 これが発端となり、その後世界的に普及をしていきました。
同書によると、 BPRの定義とは、『コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと』とあります。
上記の定義には、4つのキーワードが含まれています。
- 根本的
- 抜本的
- 劇的
- プロセス
BPRを成功へと導くためには、この4つのキーワードを含めた上での業務の改革が必須です。
根本的
流されて仕事をしているうちは、目標を達成することはできません。 現在行っている業務はなぜ必要なのか、その業務を何の目的で実施しているのか、このような組織にはどういった意味があるのか、 と言うように根本から問いかけて見て、ひとつずつ見直しを行います。
抜本的
陳腐化・形骸化した業務は思い切って切り捨てていきましょう。 慣習だけで進めてきた業務などがあれば、それを切り捨て改善していくことが必要です。 昔から決まっていることだから、慣れていて仕事がしやすいから、という理由で判断をするのではなく、客観的な視点を持って検討を行うことが重要です。
劇的
「劇的」とは、大きな改善をすることです。 少しだけの改善や部分的な改善では、大きな成果を得られません。 変革をするのであれば、大胆にできる限りの変化を成し遂げましょう。
プロセス
顧客に対して価値のあるアウトプットを生み出すための業務へと変革させていくことです。
業務改革(BPR)を進めていく上でのポイント
働き方改革、生産性向上、コスト削減の取組みの一環として、業務改革(BPR)と、業務プロセスの再設計に取り組む企業は増えています。 一方で、取り組んだものの思ったような成果が出なかったと悩む企業も多いのではないでしょうか。 では、業務改革(BPR)を成功させるためには、どのように進めて行けば良いのか、いくつかの注意すべきポイントについて紹介していきます。
スモールスタートから徐々に拡大していく
組織全体に大きな影響を及ぼす業務プロセスの再設計ですが、必ずしも最初から全社的に取り組む必要はありません。 むしろ全社一気に取り組むリスクを考慮して、スモールスタートで開始するのがセオリーです。 最初は小さい範囲で業務プロセスを見直し、小さな成功を積み重ねながらノウハウを得ていきます。 そこから他の業務領域へ拡大していきましょう。
適用する業務プロセスは慎重に選ぶ
何事も「最初が肝心」とは言いますが、業務プロセスや問題点の優先度や改革難易度を実施した上で、目安として60日~90日程度で改革が可能な業務プロセスを選びましょう。
目的(ゴール)を明確にして、そこから必要な業務を逆算
いきなり業務プロセスのモデル化から始めてしまうと、既存業務の踏襲となってしまいがちです。 何を達成する必要があるのかを考えて、そこから必要な業務とは何か、を洗い出してみましょう。 業務の目的(ゴール)をまず設定した上で、逆算的にマイルストンを設定してから必要な業務プロセスのみをモデル化し、設計をしていきましょう。
PDCAサイクルを取り入れる
一度の業務改革で終わらせるのではなく、PDCAサイクルを取り入れて継続的に実施することも大切です。 業務改革は1日にして成るものではありません。そのため何度もPDCAサイクルを繰り返して最終的な改革を達成するよう計画します。 継続は何よりも大切なので、必ず押さえておきたいポイントです。
成功と失敗の要因を必ず分析する
業務改革では成功することもあれば、失敗することもあります。 その際に大切なのは「なぜ成功したのか?」「なぜ失敗したのか?」を考えることです。 正しく要因の分析を行うことで、合理的かつ効率的な業務改革を継続していくことができます。
業務プロセスの再設計を効率良く進めるためには?
業務改革(BPR)における業務プロセス再設計は簡単ではありません。 業務プロセスをモデル化した後に定量的・定性的分析を行い、問題点を洗い出した上で効果的な対策と設計していく必要があります。
初めて業務改革(BPR)に取り組む企業にとって、これは大きな負担です。 かといって、業務改善コンサルタントに依頼をするのはコストがかかります。
そこで、業務プロセスの再設計を効率よく実現するためのツールとして、ビジネスプロセス管理システム(BPMS)の導入をする方法があります。
レッドハットでは、オープンソースソフトウェアとして、Red Hat Process Automation Manager(以下RHPAM) という製品を提供しています。
RHPAMには、以下のような機能が備わっています。
- モデリング機能
- モニタリング機能
- プロセス分析機能
- ビジネスルール機能
- ケースマネジメント機能
「モデリング機能」とは、BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記)という規格に準拠して、業務プロセスのモデル化を行います。 GUIベースでグラフィカルに作成できるため、モデリングに関する深い知識がなくとも作成できるため、部門間をまたいだ共通言語として活用することができます。
「モニタリング機能」は、展開した業務プロセス設計が正常に機能しているかを監視します。 業務プロセスの進捗状況をリアルタイムで確認することができるので、トラブル発生を事前に察知したり、問題のあるプロセスを迅速に抽出することができます。
「プロセス分析機能」は、業務プロセスを分析し、特定の業務に時間がかかっている、特定の人間へのタスクが偏っている、等のボトルネックを洗い出すことができます。
「ビジネスルール機能」は、業務プロセスの中で人間が行っていた判断を、システムに落とし込んで自動化することができます。 またルールの内容については、意思決定表(デシジョンテーブル)の形式で記述をすることで可視化を行い、現状の業務の内容をオープンにすることができます。
また企業活動においては、定型的に発生する業務プロセスと、クレーム対応や受注生産などの、非定型処理の業務プロセスも数多く存在します。 「ケースマネジメント機能」では、例えばタスクの処理が順不同であるような、非定型処理の業務プロセスをパターン化し、管理することができます。
試してみる
RHPAMについて試してみたい、触ってみたいという方のために、ローカルPCへのインストールの手順や、サンプルを動かしてみる際のポイントについて、 以下のブログでご紹介してあります。 参考にしてみてください。
いかがでしょうか?業務改革(BPR)を実行するにあたり、適切なITソリューションを導入することで、業務プロセスを可視化したり、改革案のモニタリングを行うことで導入の効果を測定することができます。
製品の提供と共に、それを業務改革(BPR)に対してどのようにして使えば良いのか、と言ったノウハウについても提供しておりますので、 内容についてご興味のある方は是非、弊社営業までご連絡を頂ければと思います。