AWS Console/Marketplaceで購入可なOpenShiftサブスクリプション(オンプレ/他クラウド用含む)

Red Hatの小島です。

日本のお客様がOpenShiftをAWSで利用する場合、従来は以下のいずれかとなっていました。いずれの場合も、OpenShiftのサポートはRed Hatが、EC2インスタンスを含むAWSインフラのサポートはAWSが提供します。

  • 年間契約制のOpenShiftサブスクリプションをAWSで利用する
  • AWS Management Console(以下、AWS Consoleと記載)から購入する従量課金制のROSAを利用する

しかし、2025年4月1日からのAWS Marketplaceでの取引における日本の消費税の取り扱い変更や、2025年5月1日からのAWS MarketplaceにおけるSaaS出品のガイドライン変更に伴い、以下をAWS Marketplaceから購入して利用できるようになりました。

  • Red Hatがサポートする従量課金制のSelf-Managed OpenShiftサブスクリプション
  • AWSだけでなく、オンプレミス(以下、オンプレと記載)や他のクラウドでも利用できる年間契約制のOpenShiftサブスクリプション

本記事ではAWS Console/Marketplaceから購入できるOpenShiftサブスクリプションや、それらに紐づいているAMIについて、2025年5月時点の情報をご紹介します。予め記載しておくと、AWS MarketplaceでのRed Hat製品の購入手順は、基本的に以下のブログで紹介している手順と同様のものになります。

rheb.hatenablog.com

OpenShiftだけでなく他のサービスも利用可能になっているので、ぜひこちらもご確認ください。

rheb.hatenablog.com

rheb.hatenablog.com

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AWS Consoleで購入できるOpenShiftサブスクリプション (ROSA)

Red Hat OpenShift Service on AWS(以下、ROSAと記載)はマネージドOpenShiftサービスの1つあり、AWS上で実行されます。ROSAには後述するOpenShiftのエディションのうち、OpenShift Container Platformの機能が含まれています。AWS ConsoleからROSAのサービスを有効化して利用開始できます。2025年5月時点では、ROSAは24時間365日のOpenShiftプレミアムサポートを提供しますが、EUSアドオン Term 1による最大24ヶ月間のマイナーバージョンサポートについては対応を検討中です。ROSAのEUSについてはRed Hatまでご相談ください。

OpenShiftをAWS上で利用する場合、基本的にはROSAの利用を推奨しています。Self-Managed OpenShiftを利用する場合と比較して、ROSAを利用する際に得られる主なメリットは以下のとおりです。

赤帽エンジニアブログでは、様々なROSAの紹介記事がありますので参考にしてください。

rheb.hatenablog.com

ROSAの種類

ROSAにはClassicとHosted Control Plane(以下、HCPと記載)の2種類があります。

  • ROSA Classic: コントロールプレーンなど全てのOpenShiftコンポーネントが、ユーザーのAWSアカウントに作成されます。
  • ROSA HCP (推奨): Amazon EKSのように、ユーザーのAWSアカウントにはワーカーノードのみが作成され、コントロールプレーンはRed HatのSREチームのAWSアカウントに作成されて管理されます。

2026年4月1日以降にROSA Classicの新規クラスター作成機能が終了しますので、Red HatはROSA ClassicからROSA HCPへの移行を推奨しています。ROSA ClassicクラスターからROSA HCPクラスターに直接変換することはできません。ROSA HCPクラスターを新規構築して、アプリケーションやデータを適宜移行していただくことになります。2025年5月時点での、ROSA ClassicからROSA HCPへの移行の主な注意点は以下となります。

  1. ROSA HCPのデフォルトのネットワークプラグインとして利用されているOVN-Kubernetesについては、内部で利用されているCIDR範囲が定義されていて、これらと重複しないネットワーク構成を作る必要があります。
  2. ROSA HCPではコントロールプレーンがユーザーに見えないために、ROSA Classicでは見えていた様々な監査ログなどがリアルタイムで見えなくなっています。これらの監査ログのうち、OAuthについてはROSA HCPでもCloudWatchへのログ転送機能を利用することで、リアルタイムで見えるようになっています。その他の監査ログは、ワーカーノードの /var/log/audit/audit.log を除いて、ユーザーにはリアルタイムで見えないままになります。ただし、前述のとおりRed Hatのサポートケース経由でユーザーが監査ログを要求できますので、後から監査ログを見ることはできます。
  3. ROSA Classicでは対応していてROSA HCPでは対応していないその他機能一覧については、以下のナレッジをご参照ください。 access.redhat.com

2025年5月時点の最新版のOpenShift 4.18では、ROSA HCPクラスターの新規作成後に内部IPアドレスのサブネットを変更することはできますが、ROSA HCPクラスターの新規作成時に内部IPアドレスのサブネットを変更する機能はGAされていません。

利用料金

ROSAを利用する場合、

  • OpenShiftサブスクリプションの利用料金
  • EC2インスタンス(OSタイプはLinux)を含むAWSインフラの利用料金

の合計金額がAWSから請求されます。

上記のROSAのOpenShiftサブスクリプション利用料金は、

  • 1つのROSAクラスターにつき、US$0.25/hour (年間割引なし. HCP版のみ請求)
  • ワーカーノードのサービス料金 US$0.171/4vCPU/hour (年間割引あり. HCP版/Classic版で共通)
    • ワーカーノードのEC2インスタンスが利用する4vCPU単位での課金
    • 2025年5月時点では、GPUの利用有無はワーカーノードのサービス料金に影響しない

の合計金額となります。

利用料金の詳細情報は、以下のWebページを参考にしてください。

aws.amazon.com

利用方法

ROSA HCPの利用方法は、以下で紹介しています。

rh-open.github.io

また、Red Hatの正式ドキュメントも以下にありますので、参考にしてください。

docs.redhat.com

ROSAは年間契約も利用できます。

aws.amazon.com

余談ですが、ROSA HCPではAmazon EKSのようにArmベースのGravitonプロセッサのワーカーノードを利用できます。さらに、マルチアーキテクチャクラスターにも対応しており、1つのROSA HCPクラスターで、x86_64ベースとAWS Armベースの両方のワーカーノードを混ぜて利用することもできます。下記の画像は、m5.xlarge(x86_64ベース)とm6g.xlarge(AWS Armベース)インスタンスの、計4台のワーカーノードから成るROSA HCPクラスターの例です。

ROSA HCPでサポートしているインスタンスタイプの一覧は、以下をご参照ください。

docs.redhat.com

AWS Marketplaceで購入できるOpenShiftサブスクリプション (3P OpenShift)

Red HatがサポートするSelf-ManagedのOpenShiftサブスクリプションです。従量課金制と年間契約制で利用できるOpenShiftサブスクリプションがあります。これらは、Red HatがAWS Marketplaceで販売しているものとなります。

Red HatがAWS Marketplaceで販売している製品は、提供元またはパブリッシャーが「Red Hat」のものとなります。「Red Hat Limited」提供の製品はEMEA地域専用のものなので、基本的に日本のお客様は使えません。

aws.amazon.com

これらの製品のうち、OpenShiftに関連するものは以下です。7番以外は全て従量課金制のOpenShiftです。

  1. Red Hat OpenShift Kubernetes Engine (x86_64版)
  2. Red Hat OpenShift Kubernetes Engine for Arm (AWS Arm版)
  3. Red Hat OpenShift Container Platform (x86_64版)
  4. Red Hat OpenShift Container Platform for Arm (AWS Arm版)
  5. Red Hat OpenShift Platform Plus (x86_64版)
  6. Red Hat OpenShift Platform Plus for Arm (AWS Arm版)
  7. Red Hat Subscriptions (年間契約制のOpenShiftを含んだRed Hat製品)

上記の従量課金制OpenShiftはAWSにとってのサードパーティ製品でもあるので、1番から6番までのOpenShiftを便宜上3P PAYG OpenShiftと呼ぶことにします。 全ての3P PAYG OpenShiftはプレミアムサブスクリプションとなり、Red Hatのプレミアムサポートを利用できます。全てのSelf-Managed OpenShiftのプレミアムサブスクリプションには、EUSアドオン Term 1による最大24ヶ月間のマイナーバージョンサポートが付属します。

2025年5月時点で、AWS Marketplaceで販売しているOpenShiftのエディションは、

  • OpenShift Kubernetes Engine (以下、OKEと記載)
  • OpenShift Container Platform (以下、OCPと記載)
  • OpenShift Platform Plus (以下、OPPと記載)

となり、違いについては以下の画像やサブスクリプションガイドを参考にしてください。各エディションでのサポートされる機能は異なりますが、2025年5月時点ではインストールなどに利用するバイナリファイルは共通しています。ただし、x86_64版とARM64版とではインストーラなどのバイナリファイルが異なります。

www.redhat.com

3P PAYG OpenShiftは通常のSelf-Managed OpenShiftと同じように、installer-provisioned infrastructure (IPI) または user-provisioned infrastructure (UPI) を使用してAWS上にインストールできますが、以下のようないくつかの制限があります。

  • シングルノードと3ノード構成をサポートしない
  • ワーカーノードとして利用できるのはRHCOSのみ

詳細は以下のWebページをご参照ください。

access.redhat.com

ROSA HCPと同様にSelf-Managed OpenShiftでもマルチアーキテクチャクラスターに対応しており、x86_64ベースとAWS Armベースのインスタンスのワーカーノード(コンピュートノード)を混ぜて構成することもできます。

2025年5月時点では、ARM64版に対応したアプリケーションはx86_64版に対応したアプリケーションより少ない傾向があるため、基本はx86_64ベースのインスタンスでSelf-Managed OpenShiftクラスターを作成しておいて、必要に応じてAWS Armベースのインスタンスをワーカーノードとして追加するのがいいでしょう。

Self-Managed OpenShift 4.18で利用できるAWSのインスタンスタイプについては、以下をご参照ください。

docs.redhat.com

利用料金

3P PAYG OpenShift

3P PAYG OpenShiftの利用料金は、EC2インスタンスの利用料金とは別にAWSから請求されます。つまり、

  • ソフトウェア(OpenShift)の利用料金
    • OpenShiftのエディションごとの違いあり
    • OpenShiftのバージョンとAWSリージョンごとの違い無し
    • 年間契約制のOpenShiftと同様に、ワーカーノード(コンピュートノード)だけに課金
    • 2025年5月時点では、GPUの利用有無はソフトウェアの利用料金に影響しない
  • EC2インスタンス(OSタイプはLinux)を含むAWSインフラの利用料金

の合計金額がAWSから請求されることになります。料金情報は、EC2インスタンス起動画面などから確認できます。

年間契約制のOpenShiftと3P PAYG OpenShiftでは、x86_64版とARM64版で価格(2物理コアまたは4vCPU単位の課金)は共通しています。x86_64版とAWS Arm版のOCPの最低料金となるインスタンスタイプの例を、それぞれのOCPカタログで比較してみると、

  • m5.large (1物理コア=2vCPU. x86_64) のソフトウェア料金: US$0.326/hour
  • m6g.large (2物理コア=2vCPU. AWS Arm) のソフトウェア料金: US$0.653/hour

となり、AWS Arm版がx86_64版の2倍の料金となっていることが分かります。これは何故かというと、x86_64ベースのインスタンスでは、SMT(俗に言うハイパースレッティング)が有効になっているものとそうでないものがあり、SMTが有効になっている場合、1物理コア=2vCPUとしてカウントされます。ただし、全てのAWS ArmベースのインスタンスではSMTが無効化されていて、1物理コア=1vCPUとカウントされます。これによって同じvCPU数に見えるインスタンスタイプでも、料金が異なることになります。

docs.aws.amazon.com

また、3P PAYG OCPの年間のソフトウェア料金を見てみると、c6i.xlarge (2物理コア=4vCPU. x86_64) と m6g.large のインスタンスタイプでは US$4,399 となり、後述する年間契約制のOCP Premiumとほぼ同じ価格となります。そのため、1年間利用する場合は m5.large のような小さいサイズのインスタンスタイプを利用しない限り、3P PAYG OCPと年間契約制のOpenShift Premiumのどちらを利用しても料金は同じと言えます。

Red Hat SubscriptionsカタログのOpenShift

Red Hat Subscriptionsカタログでは、年間契約制のRHEL/OpenShift/Ansibleなどのサブスクリプションを販売しています。その中で、OpenShiftサブスクリプションは以下の6つとなります。これらはx86_64版とARM64版で共通しており、ワーカーノードが利用する2物理コアまたは4vCPU単位で課金されます。

  • OKE Standard (SKU: MCT3823)
  • OKE Premium (SKU: MCT3822)
  • OCP Standard (SKU: MCT2736)
  • OCP Premium (SKU: MCT2735)
  • OPP Standard (SKU: MW01622)
  • OPP Premium (SKU: MW01621)

上記画像の Red Hat Developer Hub Premium (SKU: MW02585) はOSSであるBackstageをベースとした開発者ポータルを提供する製品であり、OpenShiftまたはManaged Kubernetesサービス(EKS/AKS/GKE)上で実行します。Developer Hubについては、赤帽エンジニアブログでも色々紹介していますので、参考にしてください。

rheb.hatenablog.com

これらのSKUは、Red Hatがこれまでお客様に販売してきたOpenShiftサブスクリプションのSKUと同じであり、オンプレや他のクラウドでも利用できる年間契約制のOpenShiftサブスクリプションとなります。定価も同じです。これらをAWS上で利用する場合、

  • OpenShiftサブスクリプションの年間料金 (前払い形式で、購入月の月末にAWSから請求)
  • EC2インスタンス(OSタイプはLinux)を含むAWSインフラの利用料金

の合計金額がAWSから請求されます。

これらのSKUを含んだ様々なサブスクリプションを、AWS Marketplaceのプライベートオファーでも購入できます。ご希望の場合は「購買専用のお問い合わせ」のWebページから、プライベートオファーでのサブスクリプション購入希望をお問い合わせください。その際に、プライベートオファー発行に必要な情報をご案内します。

なお、AWS Marketplaceのプライベートオファーを使用して購入するソフトウェア製品に違いはありません。プライベートオファーを使用して購入したソフトウェアは、プライベートオファーを使用せずにソフトウェアを購入した場合と同じように動作します。

プライベートオファーの発行には制限があります。全てのRed Hatサブスクリプションをプライベートオファーで購入できるわけではありません。詳細はRed Hatまでご相談ください。

利用方法

事前準備

AWS Marketplaceのカタログから購入手続きを実施するための事前準備をします。こちらのブログの「事前準備」と全く同じです。

3P PAYG OpenShift

AWS Marketplaceの3P PAYG OpenShiftの購入手順は、こちらのブログで紹介している3P PAYG RHELの購入手順と同様ですので、参考にしてください。前述のとおりOpenShiftのエディション(OKE/OCP/OPP)とアーキテクチャ(x86_64版とAWS Arm版)ごとのカタログを提供しているので、課金を正確に実施するために、利用する全てのカタログで購入手続きを実施してください。

AWSアカウントとRed Hatアカウントを連携している場合、カタログからの購入手続きが完了すると、Red Hatアカウントに自動的に3P PAYG OpenShift専用のサブスクリプションが付与されていることを、こちらのWebページから確認できます。これらのOpenShiftサブスクリプションはエディションごとの違いはありますが、x86_64版とAWS Arm版で共通しています。

3P PAYG OpenShiftサブスクリプションがRed Hatアカウントに付与されていないと、Red Hatのサポートを受けられませんので注意してください。AWS Marketplaceから購入したRed Hatサブスクリプションは「Contract Number」が「Not Available」となっていますが、Red Hatからのサポートを問題なく受けることができます。

3P PAYG OKE/OCP/OPPのサブスクリプションは、以下となります。

  • OKE SKU: MW01961
  • OCP SKU: MW01965
  • OPP SKU: MCT4383

これらの3P PAYG OpenShiftサブスクリプションは、有効期限が切れたら自動更新される設定になっています。年間課金制の契約がある場合、一番最後に作成した契約の開始日と終了日に更新されます。サブスクリプションが不要になった場合は、OpenShiftクラスターで利用している3P PAYG OpenShift専用のワーカーノードを全て削除したあとに、AWS Marketplaceのサブスクリプション管理画面からAMIサブスクリプションをキャンセルすることで、Red Hat Subscriptions InventoryのWebページからも自動削除されます。

OpenShiftのワーカーノードとして利用する3P PAYG OpenShiftのエディションのカタログで、AMI IDを確認します。この時、利用するAWSリージョン/OpenShiftエディション/CPUアーキテクチャ/OpenShiftバージョンごとにAMIが異なりますので、注意して下さい。

IPIを利用したOpenShiftクラスター作成やOpenShiftのMachinesetによるワーカーノード(コンピュートノード)作成の際には、3P PAYG OpenShiftのワーカーノードとして利用するRHCOSの中身が自動的に上書きされます。そのため、AWSリージョン/OpenShiftエディション/CPUアーキテクチャの違いさえ考慮しておけば、AMIの中にあるRHCOSのバージョンは何でもよくなるので、利用時点での最新版の3P PAYG OpenShiftのAMI IDを確認するだけでよくなります。なお、OpenShift IPIクラスターだけでなく、AWS上のOpenShift UPIクラスターでもMachinesetを利用できます。

上記画像の「Continue to Launch」ボタンからは、直接OpenShiftクラスターを作成できません。こちらのWebページのように、OpenShiftクラスター作成時に利用する install-config.yaml に、上記画像で確認したAMI IDとAWSリージョンを指定します。あとは通常どおりの手順で、Self-Managed OpenShiftクラスターを作成できます。

クラスター作成後は、3P PAYG OpenShift専用のAMI IDから起動したワーカーノードが利用するvCPU数に応じて、3P PAYG OpenShiftの利用料金が自動課金されます。

Self-Managed OpenShiftのインストーラは、x86_64版ARM64版で異なります。

Red Hat SubscriptionsカタログのOpenShift

以下のWebページから購入手続きを実施します。購入手順はこちらのブログで紹介しているRed Hat SubscriptionsカタログのRHEL購入手順と同様ですので、参考にしてください。

aws.amazon.com

購入手続きが完了すると、以下のようなOpenShiftサブスクリプション(例: OKE Standard)がRed Hatアカウントに自動付与されます。

これはRed Hatがこれまでお客様に販売してきたOpenShiftサブスクリプション(x86_64版/ARM64版で共通)と同じであり、AWSだけでなく、オンプレや他のクラウドでのOpenShiftに利用できます。AWS Marketplaceから購入したRed Hatサブスクリプションは「Contract Number」が「Not Available」となっていますが、Red Hatからのサポートを問題なく受けることができます。

ROSAとSelf-Managed OpenShift on AWSの比較

前述したとおり基本的にはROSAの利用を推奨しています。ROSAに含まれるOCPの機能を利用する場合、同一構成のSelf-Managed OCPの場合と比較すると、ROSAの方がOpenShiftサブスクリプション料金が安くなるためです。ROSAがある程度決められた構成で提供するManaged OpenShiftサービスであり、サポート提供コストが少なくなることに起因します。以下の構成例を考えてみます。

  • ROSA HCPクラスター
    • ワーカーノード: m5.xlarge (4vCPU, RAM16GiB) 2台
  • Self-Managed OCPクラスター (3P PAYG/BYOS OCP Premium)
    • コントロールプレーン: t3a.xlarge (4vCPU, RAM16GiB) 3台
    • ワーカーノード: m5.xlarge (4vCPU, RAM16GiB) 2台

1年間利用する場合を考えてみると、それぞれのOpenShiftと関連する主なAWSインフラ(東京リージョン)の利用料金は、

  • ROSA HCPクラスター: 合計金額 US$6,923.12
    • クラスター料金: US$0.25/hour/cluster x 1cluster x 24hour x 365days = US$2,190
    • コントロールプレーンのEC2インスタンス料金: US$0
    • ワーカーノードのOpenShiftサブスクリプション料金: US$1000/4vCPU x 4vCPU x 2台 = US$2,000
    • ワーカーノードのEC2インスタンス料金: US$113.88/month x 2台 x 12month = US$2733.12
  • Self-Managed OCPクラスター (3P PAYG/BYOS OCP Premium): 合計金額 US$14,776
    • クラスター料金: US$0
    • コントロールプレーンのEC2インスタンス料金: US$90.08/month/台 x 3台 x 12month = US$3,242.88
    • ワーカーノードのOpenShiftサブスクリプション料金: US$4400/4vCPU x 4vCPU x 2台 = US$8,800
    • ワーカーノードのEC2インスタンス料金: US$113.88/month x 2台 x 12month = US$2733.12

となり、Self-Managed OCPクラスターはROSA HCPクラスターのおよそ2倍以上の料金がかかります。

OCP PremiumではなくOKE Standardを利用する場合だと、ワーカーノードのOpenShiftサブスクリプション年間料金が US$726/4vCPU となるので、ようやくROSA HCPより少し高いくらいの金額になります。そのため、以下のような事情がない限り、ROSA HCPクラスターを利用する方がいいでしょう。

Self-Managed OpenShiftクラスターのコントロールプレーンのサイジングは、こちらのWebページを参照してください。

AWS Console/Marketplaceで購入したOpenShiftサブスクリプションへの移行

Red Hatから購入したOpenShiftサブスクリプションを、オンプレまたはAWSに持ち込んで利用(BYOS)している場合を想定して、AWS Console/Marketplaceで購入したOpenShiftサブスクリプションを利用するように移行する方法をまとめておきます。

オンプレのOpenShiftを利用している場合

Red Hat SubscriptionsカタログのOpenShiftへの移行

年間契約制のOpenShiftサブスクリプションの購入先を変更するだけなので、現在ご利用中のOpenShiftシステムを特に変更する必要はありません。今ご利用されているOpenShiftのサブスクリプションと同じ本数分を、Red Hat Subscriptionsカタログからご購入いただきます。

ROSA HCP/3P PAYG OpenShiftへの移行

AWS上に新規作成したOpenShiftクラスターに、コンテナアプリケーションやデータを移行します。この時、Migration Toolkit for Containers (MTC) という無料ツールを利用して、OpenShift 3からOpenShift 4への移行、OpenShift 4間での移行ができます。

docs.redhat.com

また、OpenShift Virtualizationによる仮想化機能を利用している場合、ROSA HCPと3P PAYG OpenShiftは共にOpenShift Virtualizationに対応しているので、Migration Toolkit for Virtualization (MTV) という無料ツールを利用して、オンプレのOpenShift VirtualizationクラスターからAWS上のOpenShift Virtualizationクラスターに移行できます。

docs.redhat.com

移行前後の作業も合わせて自動化したい場合、Red HatがAWS Marketplaceで販売しているManaged Ansibleサービスを別に利用することもできます。

aws.amazon.com

AWSにOpenShiftサブスクリプションを持ち込んで利用している場合 (BYOS)

Red Hat SubscriptionsカタログのOpenShiftへの移行

前述の「オンプレOpenShiftサブスクリプションから、Red Hat SubscriptionsカタログのOpenShiftへの移行」と全く同じです。現在ご利用中のOpenShiftシステムを特に変更する必要はありません。

ROSA HCPへの移行

前述の「オンプレのOpenShiftからROSA HCP/3P PAYG OpenShiftへの移行」と同様に、MTC/MTV/Managed Ansibleなどのツールを利用して移行します。AWS上のSelf-Managed OpenShiftクラスターを、ROSA HCPクラスターに直接変換することはできません。

3P PAYG OpenShiftへの移行

3P PAYG OpenShiftはこちらのWebページに記載のとおり、シングルノード構成と3ノード構成をサポートしていないので、これらの構成のOpenShiftクラスターをAWS上で利用している場合、新規構築したOpenShiftクラスターへのデータ移行が必要になります。

コントローラノード3台とワーカーノード2台以上という基本構成のOpenShiftクラスターを利用している場合、こちらのWebページに記載しているようにMachinesetのAMI IDを変更します。以下の画像のように、OpenShiftのWebコンソールからMachinesetで指定しているAMI IDを、3P PAYG OpenShiftのAMI IDに変更して保存します。

あとはMachinesetのMachineのレプリカ数を変更するだけで、自動的に3P PAYG OpenShiftのAMIからワーカーノードが新規作成されます。これによって3P PAYG OpenShiftの課金が自動的に開始します。

Machineのレプリカ数は、以下の画像のようにOpenShiftのWebコンソールからも変更できます。以下の例では「0マシン」をクリックして、マシン数を「2」に編集して「保存」することでワーカーノードを0台から2台に変更しています。

1つのOpenShiftクラスター内では、AWSに持ち込んで利用している年間契約制のOpenShift(BYOS版)と3P PAYG OpenShiftのワーカーノードを混ぜて構成することもできます。ただし、OpenShiftのエディション(OKE/OCP/OPP)とサポートレベル(プレミアム)が統一されていることが条件です。

RHELのワーカーノードはOpenShift 4.16から非推奨になり将来的に削除予定の機能なので、3P PAYG OpenShiftに移行する場合、これをきっかけにRHCOSに移行することを推奨します。RHCOSイメージのレイヤー化により、RHELをワーカーノードとして利用する機能が置き換えられ、ワーカーノードへの追加パッケージのインストールがサポートされます。RHELのワーカーノードを削除する手順は、こちらの製品ドキュメント(RHCOSのドキュメントですが、RHELでも同じ手順です)をご参照ください。

まとめ

AWS Console/Marketplaceでは、推奨するROSA HCPをはじめとして、様々なOpenShiftサブスクリプションを購入して利用できることを紹介しました。これらのRed HatがサポートするOpenShiftサブスクリプションは、2025年5月時点では次の特徴を備えています。ぜひご活用ください。

  • ROSA (AWS専用のManaged OpenShiftサービス)
    • 2種類のエディション(HCPとClassic)があり、HCPを推奨
    • EUSアドオン Term 1による最大24ヶ月間のマイナーバージョンサポートを検討中
      • ROSAのEUSについてはRed Hatまでご相談ください
    • OpenShiftのインフラ障害復旧や監査ログ保管をRed Hatに任せることが可能
    • Self-Managed OpenShiftと比べて、OpenShiftサブスクリプション料金が安い
    • ROSAの利用料金はAWSインフラとは別にAWSから請求される
  • 3P PAYG OpenShift (AWS専用のSelf-Managed OpenShift)
    • OpenShiftのプレミアムサポートを提供
      • EUSアドオン Term 1による最大24ヶ月間のマイナーバージョンサポートを提供
    • OKE/OCP/OPP 専用のオンデマンドSKUあり (x86_64版/AWS Arm版で共通)
      • 年間契約制のOpenShift(x86_64版/ARM64版)と課金形式/年間料金は同じ
    • ワーカーノードとして利用できるOSはRHCOSのみ
    • 年間契約制のOpenShift(BYOS版)と混ぜて利用することが可能
      • 1つのOpenShiftクラスター内での、BYOS版と3P PAYG版のワーカーノードの混在構成が可能
      • OpenShiftのエディション(OKE/OCP/OPP)とサポートレベル(プレミアム)が統一されていることが条件
    • 3P PAYG OpenShiftの利用料金はAWSインフラとは別にAWSから請求される
  • Red Hat Subscriptionsカタログで販売しているOpenShift (AWSだけでなく、オンプレや他のクラウドでも利用可能)
    • Red Hatがこれまでお客様に販売してきた年間契約制のOpenShift(x86_64版/ARM64版)のSKUと同じ
    • Red Hatサブスクリプションの追加購入が可能
      • サブスクリプションが複数ある場合、一番最初に購入したサブスクリプションの契約終了日に自動統一
      • サブスクリプションを追加購入する場合、上記仕様により料金の日割り計算が適用
    • AWSで利用する場合、OpenShiftの利用料金はAWSインフラとは別にAWSから請求される

Appendix

ROSA HCPに関する製品ドキュメント

docs.redhat.com

Self-Managed OpenShiftのインストール方式

rheb.hatenablog.com

Self-Managed OpenShiftでサポートされるノード構成

rheb.hatenablog.com

* 各記事は著者の見解によるものでありその所属組織を代表する公式なものではありません。その内容については非公式見解を含みます。